#07 【2020J1第10節 浦和レッズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。湘南戦は飛ばしてしまいまして、浦和戦のことを書きます。広島は鳥栖戦がまたも中止になってしまったのでやや日程に余裕がある状況、対する浦和は前の試合で6失点と厳しい負け方をし、悪い流れを払拭したい一戦となりました。スタメンは以下。

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浦和は4-4-2の形をとってきました。開幕前から注目され、始まってみればここまで6ゴールと前評判通りの活躍を見せるレオナルドが攻撃の軸になるでしょうか。今の浦和がどういうやり方を志向しているのかは知らないので、オーソドックスな4-4-2で何をしてくるかは見てみないと分かりません。

一方の広島はメンバーを湘南戦から変えず。勝っているチームは変えない、セオリー通りかつ城福監督らしい選択ではないでしょうか。

明確になった図式

さて、試合は開始早々の3分に浦和が汰木の抜け出しで得たPKをレオナルドが決めて先制。このシーンに関してはジャッジリプレイで議論もされていましたが、それ以前にハイネルの対応がまずかったという印象です。中央へのパスコースをを切りながら外に誘導するのがセオリーだと思いますが……いきなり手痛いミスが出てしまいました。その前にセカンドボールを奪いに行った川辺と青山がかわされて空いたところを使われた、というシーンでもありますが、敵陣での即時奪回を目指すなら背負わなければならないリスクでもあるので、まあ致し方なしかなと思います。

さて、前半5分で浦和が先制したことで、広島がボールを持ち、浦和が自陣に引いて構えるという構図が明白になります。この試合の浦和はもともと広島に持たせてカウンターを狙うプランだったのでしょうが、先制すると自陣でしっかりとブロックを組むことをかなり優先してきました。特に対応がきっちり決まっていると感じたのは広島の左サイドに対してです。

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左WBの柏がボールを持った際、SHの関根が下がってきて対応し、SBの橋岡はサイドまで出ていかないことが徹底されていました。これによって森島が裏に抜けていく動きをしても橋岡が見ることができます。関根はこのタスクを相当頑張ってこなしており、攻撃に出てくるシーンは前半の40分くらいまでほぼなかったと思います。

で、浦和は森島が裏に抜けていわゆる「ポケット」で受ける動きを相当ケアしており、もしSBの橋岡が出ることになった場合であっても

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DHの柴戸がついて行って自由にプレーさせません。ただしこの場合は柴戸が元いた場所が空くので、そこに青山や川辺が入ってきて崩しに行ったり逆サイドへ展開するシーンは何度かありました。

浦和がしっかり対策を練ってきているとはいえこれだけの対応を続けていれば必ず疲れが出てくるものですし、左サイドはこれをしつこく続けていれば去年のA東京戦のようにチャンスが来るのではないかと思って見ていました。

ハイネルの位置が低すぎる問題

一方の右サイドについて、チャンスができていないわけではなかったのですがずっと気になっている問題がこの試合でも起きていました。ハイネルの位置が低すぎるのです。

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ハイネルはDHと同じくらいの高さまで下がってボールを受ける傾向が強く、浦和はSHの汰木が前に出ていく形で容易に対応することができていました。右サイドではシャドーの浅野がサイドに流れていく動きも多く見られたので、それでSBを引き付けてCBSB間に川辺を走らせたいという狙いのような気はするのですが、だとしてもその移動をしている間にパスコースがなくなってしまうように感じます。実際に試合でも降りていったハイネルから効果的なボールが入ることは少なかったように思います。

25分ごろに青山からのパスで右サイドの奥まで侵入したハイネルがクロスを上げるシーンがあったのですが、この時のようにSHの汰木を後ろに下がりながらプレーさせるようなシーンがもっと見たかったなと思います。高い位置を取ってSBを引き出せば浅野や川辺が走りこむスペースができますし、SHの汰木はカウンターになるとドリブルでハイネルを抜き去って行くシーンもあったので尚更です。

一方で後半になって入ってきた茶島は積極的に高い位置を取るようになり、特に森島との組み合わせになってからは左サイドと同様に整理された攻撃ができていた印象があります。ハイネルはこの試合でも見せたように決定的なチャンスを作るプレーができる選手ですが、組織として右サイドが活きていたかというと首を縦には振れないかな、という感じですね。

紙一重だった采配

さて、浦和は前半の30分過ぎあたりから関根を下げた5-3-2のような形で守り、後半に入ってからは5-4-1で完全に撤退の構え。63分には得点の期待できるレオナルドを下げてキープ力のある杉本健勇、74分にサイドの汰木に替えてDFの岩波を投入するなど、この試合では一貫して点差を守るためのカードを切っていきました。

一方の城福監督もハイネルと浅野を下げて茶島と東を入れて右サイドに手を加えると、さらに柏に替えて藤井を投入、左が藤井と東、右が茶島と森島という組み合わせに変更します。ここが城福監督の考えが見えるようで面白かったですね。基本的には森島と柏を強いユニットとして考えているので柏がいる間は森島を左に置いていますが、柏がいないなら裏抜けしてクロスを上げやすいようにシャドーは効き足と同じサイドに配置するという意図なのかなと思います。

さらに青山とペレイラに替えて野津田とヴィエイラを投入しますがこの辺りから攻撃はトーンダウン。特に左サイドは藤井のドリブルに対し、左利きの東と野津田はサイドの方がプレーしやすいのか寄って行ってスペースを狭めてしまう場面も見られました。この辺の連携はまだ発展途上ということかもしれません。個人的には相手がこれだけ引いてるなら中盤かDFを削ってペレイラヴィエイラのツインタワー戦術も面白いと思いましたが、それはやりませんでしたね。

結果的には浦和が逃げ切りに成功して大槻監督の采配が当たった形になりましたが、広島も東と茶島の投入以降は攻撃がうまく回っており、もしそのタイミングで追いついていれば城福監督の采配が的中、レオナルドを引っ込めてしまった大槻監督は途方に暮れることとなったでしょう。紙一重のゲームだったと感じます。

試合を終えて

結局開始5分のゴールを守り切った浦和が勝利。守護神の西川を中心に何としても守り切るという気迫を感じる戦いでした。前節の反省を踏まえてまずは守備を優先するというのは分かっていてもやり切るのは簡単なことではありません。勝ち点3への執念を感じるゲームでした。

広島は敗れはしたものの多くのチャンスを作りだしました。しかし交替で入ってきた選手たちの連携や5バックの相手に対する攻め方などまだ発展途上と感じる部分もあります。とはいえすぐにFC東京戦、その後は横浜FM、仙台と難敵が続きます。去年からやってきた路線を継続し、さらなる成長が見られる好ゲームを期待したいですね。

それではまた次回。