#14 【J1第26節 横浜F・マリノス×サンフレッチェ広島】

はしがき

どうもお世話になっております。更新自体はリーグ戦2試合ぶりですが代表戦やルヴァンカップがあってずいぶん空いてしまったような気がしますね。

さて今節は横浜Fマリノス戦。3位vs4位の6ポインター、負けた方は優勝争いが大きく遠のくことになりそうな一戦です。スタメンは以下。

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横浜はエジガルジュニオが不在ということで仲川が前線の中央に配置。あとは松原が久々に先発のようですね。広島はドウグラスレアンドロもケガでいないため渡ワントップ。青山が先発に入って川辺と東がシャドーに起用されています。

広島の守備タスクと偽サイドバック

さて、かねてよりボール保持を磨いてきた横浜のビルドアップに対し、広島は個々人のプレッシングにおけるタスクをわりと整備してきたな、という印象を受けました。

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まあいつもの同数プレスと言ってしまえばそれまでなのですが、誰が誰を見るかがちゃんと決められていましたね。2CBに対してはワントップの渡とシャドーの東がアプローチ。左SBのティーラトンに対してはシャドーの川辺が出ていき、右SBの松原に入った場合は柏がスライドし、エリキを佐々木が捕まえる形になっていました。ティーラトンは川辺が見ているのでハイネルはステイ。左WGの遠藤に対応します。

もともと配置が噛み合っていないのでどうにかズラさないとプレスがかかりにくいのですが、このような分担をした理由はそれだけではないように思います。攻撃をけん引する存在である柏に高い位置を取らせ、守備に難のあるハイネルに複雑な役割を与えない効果もあったのではないでしょうか。

こうした対応で横浜の前進を防げればよかったのですが、実際にはそうはいきませんでした。

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横浜のSBは中央に入ってくる、いわゆる偽サイドバックとして振る舞うことがあります。特に左サイドのティーラトンはこの動きを積極的に行っており、時には扇原と入れ替わるくらいに内側まで入ってくることもありました。立ち上がりに広島のプレスが厳しいと見るやポジションチェンジで揺さぶってくる対応の速さには驚きました。

この動きに対して広島側が対応しきれておらず、青山は扇原に迷わず出ていくものの川辺はティーラトンについていって良いのか迷っているシーンも見られました。この状況をうまく利用していたのがマルコスジュニオールで、青山が出ていった背後のスペースに入り何度もボールを受けることに成功していました。8分の遠藤のシュートはまさにティーラトンからマルコスに綺麗にパスが通って決定機となったシーンですね。その他にも前半10分までにマルコスが青山の裏で受けて前を向くシーンが2回ありまして、広島としては完全に弱点を殴られてボール前進を許している状態でした。

ここを使われないために青山は次第に出ていくのをやめ、チーム全体のプレスも徐々に緩くなっていきます。20分ごろからは横浜がボールを保持して押し込み、広島は5-4-1で撤退という状況が増えていきました。

空いているサイドから裏を狙うなら……

広島は押し込まれてなす術がなくなったかと思いきや、自陣でボールを奪ってからでも割と前進することができていました。

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ボールを奪った後の広島は青山が最終ラインに落ちて4バック化、横浜はそれに対して前線の4人を中心にプレスをかけてくる、という展開です。しかし、解説の岩政さんが指摘していたように右WGのエリキはサイドを捨てて中央の荒木、青山にアプローチをかけてくる傾向がありました。柏が高い位置を取っていて松原が出てこられないためこの状況だと佐々木は完全にフリー。そこにGKの大迫を経由してボールが出てくることが何度もありました。この展開を正確に行える大迫のキック精度は素晴らしかったですね。

ここでボールを受けた佐々木から直接ボールを出すこともありましたが、主な攻撃ルートは中央に展開して渡かハイネルの裏を狙うルートでした。横浜の最終ラインは挑戦的といっていいくらいに高いため、その裏をスピードのある選手に突かせるのは至極まっとうな攻略法でしょう。ただ気になったのは出し手の人選です。

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今節の11人のうち最も質の高いパスが出せるのは青山のはずですが、彼は最終ラインに降りていて裏へのボールを蹴ることはできません。主な出し手は川辺や稲垣でした。彼らもいいボールを出していることはありましたが、ロングパスの精度で言えばおそらく青山に分があるはず。であれば稲垣を最終ラインに落としてビルドアップし、空いた中盤から青山が長いパスを連発する形の方が良かったのでは?と感じました。なつかしきミシャ式でも彼がいたのはMFのポジションでしたし。

そんなわけで両チームともプレスがかからないためゴールに迫り、チャンスも結構できていましたが得点は生まれず。スコアレスのまま前半を折り返します。

両監督、修正の差

後半に入り選手の交代はありませんでしたが、横浜の方に変化が見られます。

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前半は中央に入ってくる傾向があったエリキをサイドに張らせます。これによって佐々木へのパスコースを遮断。広島は最終ラインからの脱出法を失い、ロングボールに頼らざるを得なくなりだします。しかし、単純なロングボールでは渡は不利。城福監督はボールが収まると期待したのか森島を投入しますがそれだけでは改善できず。横浜がボールを保持して攻め続ける展開となります。

また、森島の投入と同じ時間帯からハイネルに明らかに疲れが見え始めます。足だけでボールを狩りに行って外される、カバーリングに戻れなくなるなど守備面での粗が目立つようになっていました。もともと守備がうまい選手でもないのでそこには目をつむって起用されていた感もありますが、ボールが握れずカウンターもままならないこの状況では攻撃によって守備面でのマイナスを取り返すこともできず。失点シーンでは遠藤に釣られて外に立ちすぎた結果裏を取られてしまいました。

ハイネルが後半開始15分くらいでガス欠になることはここ数試合で分かっていたと思いますし、エミルへの交代がもうちょい早くても良かったかもしれません。まあ構造的に押し込まれることはそれだけでは解決できないのですが。

押し込まれ続けて解決策が見えないまま失点した広島に、反撃する力はありませんでした。そのままボールを支配され続け、ミドルシュートとPKからさらに2失点。11戦無敗は3失点完敗によって終わりを告げることになりました。

試合を終えて

前半は互角と言ってもいい内容だったものの、後半に大きな差が現れました。チーム力の差と言ってしまえばそれまででしょうが、横浜はプレーの指針が明確で問題点に対する修正が迅速に行えていた印象です。対する広島は、事前に決めていたチームの方針が行き詰まった際に打開するための策を用意できませんでした。相手の偽サイドバックへの対処は撤退以外になかったのか。左からのビルドアップが封じられた時、他にルートは用意できなかったのか。たらればではありますが、これらに対する策が用意されていればと思わずにはいられません。

城福監督は相手への対策よりも自分たちのスタイル構築に時間を割くと宣言してこの3か月やってきたということですが、相手を見てサッカーをすることの大切さをこの試合の横浜は教えてくれたような気がします。優勝争いからも残留争いからも遠ざかった今、改めて内容に期待したいです。自分たちの理想とするスタイルがあるのはもちろん重要なことですが、それが対策されたときのプランBを用意できるか、どのように対応していくか。残りのシーズンはそのようなことに着目したいと思います。

それではまた、次回があれば。