#02 混沌【J1第2節 サンフレッチェ広島×ジュビロ磐田】

 


 


はしがき

平素より大変お世話になっております。今節もやろうと思いますので、お付き合いいただけると幸いです。

背景

開幕戦では清水エスパルスを相手に引き分けとなった我らがサンフレッチェ広島。ビルドアップや前線からのプレスはある程度うまくいったものの、結局最後はパト頼み問題が残っていたり、ネガティブトランジションや守備ブロックに危ういところが見られたりとまだまだこれからといった様子でした。

さて今節はホームにジュビロ磐田を迎えます。開幕戦では偽サイドバックを披露したという噂も聞こえますが、名波監督はどのような戦略で乗り込んできたのでしょうか。スタメンは以下。

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広島は前節ベンチスタートだったパトリックをスタートから起用。あとは前節と同じメンバーで、並びも変更ありません。

磐田は4-3-3。DAZNのスタメン紹介では4-2-3-1で、実際の試合でもどっちか微妙なこともあったのですが、こちらの方がやや実態には近いのかなと思い、この表記にしております。書きやすいし。

磐田のボール前進と広島のプレスの弱点

さて、試合開始からボールを握ったのは磐田でした。繋ぐサッカーを標榜する広島はあまりボールを保持することができなかったわけですが、その理由を考えるためにもまず磐田のボール保持の仕組みを見ていきます。

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といってもよくある4-3-3→3-4-2-1変換で、基本的にはオーソドックスなものであったと言えます。噂の偽サイドバックについては、後方で安定してボールを持てたときにやってることもある、という感じでした。

サイドバックはSBの選手(松本昌と高橋)を外に開かせる代わりに中央のDHあるいはIHの位置に置き、かわりにWGの選手(ロドリゲスとアダイウトン)を外に開かせるという配置です。WGが突破力を持っている場合にそれを生かすことができるので、ロドリゲスとアダイウトンという推進力のあるアタッカーを起用している磐田にとっては理に適った配置といえそうです。ただ、その分中央に入るSBの選手にはDH、IH並みの技術や状況判断が求められるのが難しいところで、松本昌はうまくこなしていたものの高橋はなかなか苦労していた、という印象です。

あとは図中のオレンジ矢印で示したところなのですが、大久保と山田のどちらかが最終ラインの脇まで降りてくることが多かったです。この動きによって磐田は最終ラインで余裕を持ってボールを保持できていたと思います。この試合、パトリックが磐田の最終ラインに降りたアンカーにプレスをかける場面があまり見られなかったのですが、それはパトリックの守備意識の低さだけでなく、IHが降りてくるのでどこを基準に守備を開始すればいいかが不明瞭になってしまったことも原因だと思われます。

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また、33分のシーンがそうなのですが広島がこのビルドアップに対して前節と同様にシャドーがプレスをかけに行くと、前に出たDHの裏のスペースを使ってボールを受ける場面も何度か見られました。このスペースでは前節にも何度かボールを受けられており、広島がこの並びでハイプレスを行うのなら解決しなければいけない問題と言えそうです。プレスはシャドーに任せてDHが埋めるか、もしくはこのシーンのようにCBが出て潰すかのどちらかが必要でしょう。

このようにボールを保持してDFラインの手前、いわゆるゾーン2までの前進には成功していた磐田ですが、そこから先はまだ構築できていないのかうまく崩すまでには至っていませんでした。というか磐田の攻撃陣は動きが流動的過ぎて狙いがあったのかもしれませんが読み取ることができませんでした。難しい。

うまくいかない広島の4+1とサイド攻撃

さて、広島はボールを保持できなかったのは敵陣からのプレスがはまらなかっただけではなく、自陣でのボール保持にも問題があったからだと考えます。前節では3バック+2DHでうまくボールを運べていたのですが、今節はなぜか泰志が最終ラインに降りて4バック+1DHの形になることが多かったです。

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この形だとDHへのコースが簡単に消されてしまい、ボール前進がうまくいきませんでした。また、ミシャ式よろしくあとの5人は前線にいるため縦パスを入れることができず、パトリックめがけて蹴っ飛ばすしかない状況が度々生まれていました。

敵陣からのプレスの空転、4+1ビルドアップの機能不全、そして詰まってもないのになぜかロングボールを多用するという3つの要素が合わさって広島はボールを保持できなかったと思われます。プレスの空転はともかく4+1にしたりロングボールを多用したりと変化させた理由はよくわかりません。選手の独断なのか、城福さんによって計画されたものなのか……

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そんな中でもボールを素早く再度まで運べた場合には前節でも頻繁に見られた野津田のSBCB間へのランニングによってDHを最終ラインに吸収させる動きを使っていました。やはりこの動きはきちんとデザインされたものであることがうかがえます。磐田は4バックなのでこの動きによってSBをつり出すことでバイタルエリアにより大きなスペースを生み出すことができ、DHがそこを使う形ができることもありました。ただ相変わらずここからのコンビネーションについては特に何もなく、守備を崩すには至りませんでした。磐田はただでさえスペースが生まれやすいのにアダイウトンが戻ってこないので中盤の人数が足りなくて崩しやすいと思うのですが……

そんなこんなで最終局面の崩しはできていなかった両者。広島は攻撃時に人数をかけすぎるし磐田はアダイウトンが残っていてネガトラには問題を抱えていたのでカウンターから1点くらい入るかと思ったのですがそれもなく、スコアレスで前半は折り返します。

解決策の見えない後半

それで後半なのですが……正直状況を打破するだけの変化は観測できなかったように思います。広島が野津田に替えてドウグラスヴィエイラを入れたのはアダイウトンがいない右サイドからの攻撃を重視する狙いで良いかと思ったのですが状況はよくならず、両チームとも即興頼みの攻撃に終始してしまったかなと思います。両チームともに大外のレーンに3人が並ぶみたいにポジショニングが定まらず混沌としている場面も見受けられ、得点は奪えませんでした。

試合を終えて

広島はボールを保持するという狙いを遂行できず、良いところのない試合だったと言っても過言ではないかもしれません。個人的にはビルドアップをパトリックに依存するのは勘弁してほしいという思いです。DFラインの配置を変えるもよし大迫は割と繋げるんだからそこを使ってもいいと思いますし、なんにせよ繋ぐサッカーを掲げるならもうちょっとあきらめずにショートパスによるビルドアップを試みても良いのでは?と思います。また、敵陣からのプレスを外される場面が前節から目立ちます。次節はセレッソが相手ですがロティーナ監督が対策してこないはずはないと思うので、そこにどう対応するかに注目してみたいですね。

磐田は中盤まで前進したもののその後がまだ整備できていない感じを受けました。広島と似たような課題を抱えていると言えます。偽SBはアダイウトンとロドリゲスを生かす策としては理に適っていると感じるのでそこを整備するか、偽SBやらないにしても内側のレーンを活用した攻撃を仕込めるかどうかがカギになると感じます。

 

それではまた、次回があれば。