#24 【J1第24節 鹿島アントラーズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は鹿島戦。広島にとってはルヴァンカップの良い流れを引き継いでいきたいところ。鹿島は前節マリノスに離されてしまったのでこれ以上の敗戦は避けたいゲームです。スタメンは以下。

広島は水曜日のルヴァンと全く同じ11人。連戦中の中2日という日程ながら強気なスタメンです。鹿島は前節から4人変更。ピトゥカやエヴェラウドが入ったことでボールの収まりが良さそうな面々です。

鹿島のシンプルな前進とサイド攻撃

さて、最近の広島はボール保持率が低いながらもプレッシングで相手を押し込んでプレーエリアは敵陣という傾向が強かったのですが、この日は珍しくボール保持率で勝っていました。それは広島がボールを大事にしたというよりも、鹿島の方が広島のプレッシングに対して裏返すような長いボールを多めに使ってきたことが要因と考えられます。

鹿島は鈴木、エヴェラウド、カイキの集まる左サイドに長いボールを蹴ることで前進を図ることが多かったです。この3人は誰がロングボールを競っても誰が裏に走っても高水準のプレーができるので、役割を入れ替えながら広島の右サイドに襲い掛かってきました。塩谷はこれには結構苦戦していましたね。
広島が高い位置から追いかけていくのは長いボールを蹴られても後ろのCBが跳ね返せることが前提なので、そこを揺るがされると厳しい展開になります。広島はいつものようにプレッシングでプレーエリアを敵陣に寄せることはできず、思い通りにいかない展開となりました。

敵陣まで前進した鹿島の攻撃は一貫して大外へのクロス狙い。SHとSB、時には流れてくる鈴木優磨を絡めてのクロスから大外でヘディングで合わせる形を執拗に狙ってきました。

50分のカイキのヘディングシュートや、82分の鈴木優磨が合わせに行ったシーンがそれですね。広島は中央の3CBは跳ね返しにはめっぽう強いものの、両WBは攻撃的なキャラクターの選手を起用しているので戻りが遅くなり、ファーサイドにスペースが空いていることが結構あります。そこにカイキエヴェラウド鈴木のようなヘディングの強い選手を飛び込ませることで決定機を作り出すという狙いですね。シンプルですが対処しづらく、広島は何度か危ない場面を作られました。

まとめると、鹿島は高さとキープ力のある前線3人を軸に長いボールを中心に前進し、SBや鈴木を交えたサイド攻撃から最後はまた前線の3人でのフィニッシュを狙うという流れで攻撃を組み立てていたという前半になります。

見えやすかった保持での成長

広島はこの試合でボール保持率で上回っていました。保持率で上回るのが必ずしも良いこととは限りませんが、広島のボール保持が長かったことでこれまでに積み上げてきたものが見えやすかったと思います。

鹿島は2トップ+SHの3人でプレッシャーをかけてくるので、そのままでは捕まってしまいます。そこでまずは野津田と松本が降りて最終ラインの保持を安定させます。
落ち着いてボールを持てるようになったら左右のCBがWBへ展開。この時CBはドリブルで鹿島のSHを引き出してから展開するのがミソで、これでWBに渡したときに鹿島のSBを引き出せればSBCB間が空き、シャドーが裏抜けするスペースができます。
シャドーがフリーならそこに出せばいいし、鹿島のDHがシャドーについてきたらその時は中盤が空くのでそこに渡して逆サイドに持っていくことができます。

こうやって書くと簡単そうに見えますが、CBがパスを出すのが早すぎたりシャドーやDHの動きがなければすぐにWBが捕まってしまう訳で、全員が連動してうまくそれを避けられていたのはとても良かったと思います。さらにここに森島の間受けや塩谷の長距離ドリブルなど複数のバリエーションをもって鹿島を揺さぶりに行けていました。

ただ鹿島もやられっぱなしという訳ではなく、シャドーの裏抜けには必ずDHがついて行って蓋をしていましたし、逆サイドへの展開にも全体が素早くスライドして対応していました。鹿島の対応が良かったこともあり前半は広島の保持からのチャンスは少なかったものの、ボディーブローのように鹿島の体力を削ることができていたと思います。

ただし、ゴールキックの時など早く始め過ぎて鹿島のプレスをまともに浴びてボールを失う機会が多かったのは反省点。野津田や松本が降りないとなかなか保持を安定させられなかったので、彼らが降りてくるまで待つという意思統一はあっても良かったなと思います。

お互いに狙いを持って繰り出すカウンター

また、この試合では両チームともカウンターの繰り出し方にしっかりと狙いを持っていることも感じられました。
広島はカウンターから中盤の選手が持ち上がった瞬間に1トップが背後へのランニングで鹿島のCBを引き連れていき、ドリブルのためにスペースを空けるという動きが見られました。ナッシムもドウグラスもカウンター時はかなり精力的に裏へ走っていて、それによって縦に早い展開でゴールに迫れていたように思います。

16分の森島のシュートシーンなんかはこの形ですね。ナッシムが背後へ走ることで三竿をボールから遠ざけ、満田と森島にスペースを作ることに成功しました。1トップの選手がこういうスペースを作る動きをやってくれると助かりますね。もちろんスルーパスで裏抜けできる可能性もあるわけですし。

一方の鹿島は特に後半、カウンターの起点の作り方に狙いが見えました。

広島は松本が飛び出して行ったり野津田がボールに寄って行ったりでDHが中央からいなくなってしまうことがあるのですが、鹿島はボールを奪った際にそこで起点を作ることが意識されているように感じました。

ボールを奪った際に逆サイドのSHやDHがボールの中継地点となるためここに入ってきて素早く前線につなぐ、というシーンが何度か見られました。広島の強固な3バックに対して直接ボールを入れてしまうと跳ね返される可能性が高いですが、このように中盤を経由して前向きに運ぶことで広島のCB陣を背走させて対応を難しくできます。

広島は松本や野津田の可動域を広げることで捕まえづらくできますが、この方法は空いた中央を使われるリスクを伴う諸刃の剣。前節も佐々木が上がった裏から失点する展開がありましたが、後ろの選手を高い位置まで動員した場合はしっかり攻撃を完遂できるようにしたいところです。

選手交代の明暗

82分までスコアレスで推移したこの試合、決めたのは野上と川村、エゼキエウという交替で入った選手たちでした。野上は鹿島の大外攻撃に対する対空要員としての意味合いも大きかったと思うのですが、値千金のアシストでした。川村とエゼキエウという今季なかなか出番のなかった2人にゴールが生まれたのも大きかったですね。
ドウグラスヴィエイラも含め、攻撃を再度加速できるカードを持っていたことがこの勝利につながったと言えるかもしれません。今後の連戦を乗り切っていくうえで頼りになる選手たちが出てきてくれましたね。

一方の鹿島はカイキを下げたことで2トップの負担が大きくなったのか、80分頃からトーンダウンして前に出られなくなってしまう展開に。攻撃の多くを担う前線3人の替えの利かなさが出てしまったということでしょうか。鈴木優磨は広く動き回ってビルドアップもチャンスメークも担っていましたが、彼がフィニッシュに専念できる環境を作ってあげたいところかもしれません。

それではまた次回。

#23 【2022J1第23節 サンフレッチェ広島×FC東京】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は代表ウィーク明けの東京戦。代表に6人招集されていた広島にとってはややきつい日程という説もありますね。スタメンは以下。

広島は野津田がお休みで川村が起用された3-4-2-1。代表組あと5人は元気に先発です。

東京は前節から3人変更の4-1-2-3。コロナの影響もあるかもしれませんね。どこも大変だ……

中盤に人を補充してくる東京

さて、対4-1-2-3ということで広島のプレッシング方法はほぼこれまでと同じでした。

1トップ2シャドーで東京の2CB+アンカーを監視し、WBがSBに、DHがIHに出ていく形ですね。3バックは3トップとの数的同数を受け入れます。
シーズン序盤にやっていたサントスが1トップの形ではアンカーにべったりでしたが、この試合ではナッシムがアンカーをマークしながらも、状況に応じて2シャドーにマークを渡してCBまでプレスに出て行っていました。マリノス戦でもこんな感じでしたね。序盤はマークの受け渡しに苦労していましたが、時間が経つにつれてマークの受け渡しが整理されて早くなっていきました。

さて、ほとんどマンツーマンの形でパスコースを削られた東京は長いボールで打開を試みるかと思いましたが、この日の両翼は三田と紺野ということで推進力という点ではいまいち(レアンドロアダイウトンに比べれば、ですけども)。ということで、広島のビルドアップに対して配置で対抗していくすべを用意してきていました。

特に効果的だったのが長友が内に入ってきてずらすパターンとディエゴが広島DHの裏に降りてくるパターンです。

前者は長友が大外ではなく内側に入ってくることで東の守備基準を狂わせます。広島のWBはプレッシング時には大外レーンで下がるか出ていくか、の判断が基本なので急に対面の相手が内側に入ってくるとついていくか迷うというやつですね。逆サイドの佳史扶は内側に入ってくることはあんまりなかったので長友の特殊技能なのかもしれません。年齢を重ねてもプレーの幅を広げられることが感じられて素晴らしいですね。

そして後者は広島のDHが出ていったスペースにディエゴを降ろして長いボールを納めさせるパターン。マッチアップの荒木は対人J最強クラスですが、スペースがあるのでディエゴは比較的プレーしやすかったかもしれません。また、荒木としても中央を空けてディエゴにどこまでもついていく!というのは抵抗あるでしょう。

この2つの方法については広島の守備陣にどこまでついていくか?という迷いを与えることに成功しており、東京の前進に一役買っていました。WGが降りて受けるパターンもあったのですが、それは佐々木と塩谷がどこまでもついていって潰すという判断をしていたのであんまり効いていない感じでしたね。

アウェイでの対戦時は広島のプレッシングに対してひたすらロングボール!という解決をしていた東京でしたが、配置を操作して脱出を図ってくるあたりにアルベル監督の哲学の浸透が垣間見えました。

ハーフスペース突撃とボールの失い方

広島がボールを持った際にはサイドに展開してからハーフスペースを裏抜けする選手を使って攻略していくといういつもの光景が見られました。これ自体はとても効果的なのですが、広島はこの裏抜けに色々な選手を使ってくるという特徴があります。特に左サイドはシャドーだけでなくDHの松本や、時には佐々木が上がってくることもあります。これは相手のマークを分散させてフリーになりやすくする一方、ボールを失ったときに一気にピンチを招きやすくなるという側面もあります。
それが分かりやすい形で出たのが67分の同点ゴールの場面。

佐々木が敵陣深くまで上がっていったところでボールを失うと、そのままプレスをかけられずに佐々木がいない左サイド奥深くにアダイウトンに走られています。このシーンでは佐々木が上がってくることで前線に人数が多くなり、ボールを失った際に誰がプレスに行くのか分かりにくくなっているような印象を受けました。そしてそのまま佐々木がいない分スペースの大きい背後へ流されて前進を許した形です。

普段であれば失ったときに誰が誰にプレッシャーをかけるか決まっているか、決まっていなかったとしても後ろに3CBが残っているので凌げているのですが、このシーンではそのどちらでもないように見えました。要するに想定していないボールの失い方をしたので一気にピンチになった、ということだと思います。

これは2失点目にも言えることだと思いますが、広島はプレッシング時やネガトラ時に後方の数的同数を受け入れるというスタイルなので、中途半端にボールを失うと一気にスペースにボールを運ばれて大ピンチになってしまいます。後方が同数でも凌げるのはボールを失った際に前線の選手たちがすぐにパスコースを制限しているという前提があってのことなので、それがなくなるといかに広島のCB陣でも厳しいです。

CBの攻撃参加をやめるとか、CBが裏抜けした時には多少無理やりでもそこにボールを出すとか、想定外の失い方をしないための仕組みづくりがあっても良いのかなーと感じました。

お互いの今後の課題は……

広島については想定外の失い方をしないというのも課題ですが、あとはもっと得点が取れないと厳しいと感じる試合が増えてきましたね。やっぱりJ1レベルのアタッカー相手に後方を同数にして90分凌ぐのはきついと思います。というか、1失点くらいは仕方ないと割り切って前に出ていると考える方がしっくりきますね。

なので、勝つには最低でも2点以上取らないと厳しいはずです。早くゴールに迫る場面が欲しいというのはマリノス戦の時にも書きましたが、せっかく高い位置で奪っても味方の上がりを待つことで相手が戻ってきてスペースが消えてしまう場面が目立ちます。それはそれでネガトラでボールを回収しやすいというメリットもありますが……
前方のスペースを活かして素早くカウンターを完結させるというのは今のスタイルとあっていると思いますので、そういう場面が増えることに期待したいと思います。

東京については課題というか、ここからどうするんだろうという疑問がありますね。保持で相手を走らせた後にアダイウトンなりレアンドロなりを投入して走らせるというのはとても理に適っていますしかなり効率よく勝ち点が稼げると思います。しかしアルベル監督がやりたいのはそういうことなのかどうか?という疑問です。
今のスタイルで勝ち点を稼いでいくのか、アダイウトンレアンドロの強みを捨ててまでポジショナルを追い求めるのか、理想と現実のバランスをどうとっていくのかが気になるところです。戦力的には優勝争いしても何もおかしくないレベルなだけに、どこに落ち着くのかはとっても興味深いなあと思います。

それではまた次回。

#22 【2022J1第22節 京都サンガ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は京都戦。9連戦のラストということで、ようやく一息つけますね。代表に呼ばれた6人は引き続き稼働になるのですが。スタメンは以下。

京都はDAZNでは4-3-3予想でしたが井上を中央に置いての3-4-2-1でした。前回対戦の鋼板でも3バックだったので、それを踏襲した形。一方の広島も前回対戦を意識してか久しぶりの3-1-4-2スタート。塩谷がいないくらいでベストメンバーを揃えました。

少ないミスマッチをどうするか

さて、立ち上がりは京都がボールを保持する場面が目立ちます。広島は前回対戦と同様に2トップを京都の2CBにぶつけて前進を狙いましたが、京都は3バックで人を余らせて対応。ボール保持時にも数的優位を作ってプレッシングを剥がすことに成功します。

しかし広島は3バックが強固。縦パスや長いボールを入れられても対人性能で跳ね返して前進を許しません。特にウタカに対しても高い勝率を誇った荒木は圧巻でした。

最終ラインの跳ね返しで時間を稼いでいる間に京都の配置を見定めた広島は、徐々に対処法を編み出していきます。

2トップが片方のサイドにビルドアップを誘導し、京都のCHに対してはIHが、WBに対してはWBをぶつけて出しどころを潰します。京都がGKの上福元を使って回避してくるようならIHを前に出して野津田がスライドして対応。後方は同数になりますが、この試合のデュエル勝率なら収支は十分プラスだったと思います。

また、ボール保持の場面でも広島は中盤の数的優位をうまく使っていました。

京都は3トップが広島の3バックに対してプレスに来るので、広島は中盤の3センターが数的優位を得られます。京都はCBを前に出して解決しようにも広島の2トップが常に背後を狙っているためなかなか潰しに出て来られません。1人前に出て同数となったところに長いボールを出されれば前回対戦の二の舞ですからね。
広島の2トップ裏抜け作戦は前回ほど派手には効きませんでしたが、中盤にスペースを作り出すという形でしっかりと効果を発揮していました。

広島の3センターは中央~左で数的優位を活かしてパス交換から右サイドの藤井に展開、というパターンを多用しており、この辺もうまく意思統一できていましたね。藤井のスピードを生かすために右サイドには人を置かずにスペースを空けるという狙いで、今年の広島では見慣れた光景です。京都の方もそれをわかっていて、藤井の突破に対しては武富を戻して2人で対応する場面が多くなっていました。

背後を狙う両チーム

前半は序盤に京都が優勢ながらも徐々に広島が流れを手繰り寄せる形で推移し、お互い無得点。広島は後半からベンカリファに替えて松本を投入します。

MFチックな選手を増やしたことによって最前線からの抜け出しが少なくなった代わりに中盤から背後のスペースに飛び出していく動きが多く見られました。京都はCBとWBの間が広く空くことが度々あったのでそこを使ったり、CBが出てきたら裏に抜けたり。後半から入ってきた松本も裏への飛び出しは得意なので、うまくスペースを活用できていました。

一方の京都はボール前進に苦労する場面は引き続き多かったものの、豊川や武田といったフレッシュな選手を投入してインテンシティをキープ。疲労が見える広島の中盤に対してボールの奪い合いから優位を築きに行きます。
前線3人が広島の3バックを相手にボールをキープできる場面は少なかったものの、中盤でこぼれ球を拾ったらすぐにCBの裏にボールと人を送り込むことは徹底されているように感じました。同点ゴールもその形から。プレー強度で広島に抵抗できる選手層と、前進の機会を最大限に活かす設計が印象的でした。

ゴールに迫る速さが欲しい

さて、この試合というか最近の広島を見ていて気になるのが、ゴール前へ人とボールを送り込むスピードの遅さです。

この試合でも藤井や東、野津田がサイドの高い位置でフリーで前を向きながらボールを運ぶようなシーンはあったのですが、じっくりと味方の上がりを待ってからクロスを上げて跳ね返されるという場面が目立ちました。もちろんゴール前に味方がいなければ待つしかないのですが、個人的にはゴール前に1人2人しかいなくても早めにクロスを上げて飛び込んでもらっても面白いのになーと感じます。

味方の上がりを待ってからクロスを上げるとそれだけ人数もかけられますし全体を押し上げられますが、相手も戻ってくるため狭いスペースでシュートを打つ必要があり、それだけプレーの難易度は上がります。
それならば人数が少なくてもスペースがある状態でアタッカーに勝負させてもいいんじゃないかなーと感じます。クロスが跳ね返されたときに中盤の広いスペースでボールの奪い合いになって一気に自陣まで運ばれるリスクもありますが、今の広島のプレー強度であればそれでも十分に勝算はあるはず。
広島のアタッカー陣にはヘディング強い選手は多くないので、高いボールで狭いスペースで勝負するよりは、広いスペースがあるうちに低くて速いボールを送り込んでしまう方が向いているんじゃないかと思います。

今の広島はシーズン序盤と比べてクロス攻撃の質が大きく向上していますが、そこに新たなバリエーションとしてサイドからの速い攻撃が加わると面白いなと、この試合を見て改めて感じました。今シーズンも折り返しを過ぎましたが、そういった挑戦が見られることを期待したいです。

それではまた次回。

#21 【2022J1第21節 サンフレッチェ広島×湘南ベルマーレ】

はしがき

平素は大変お世話になっております。今回は湘南戦。9連戦の7試合目ということで選手の疲労もピークに達していそうなところですね。スタメンは以下。

広島は前節からスタメンを9人入れ替えてきました。選手の疲労が~とか言っていたらめちゃめちゃターンオーバーしてきましたね。水曜日の天皇杯ではなくここでターンオーバーしてくるということは、ここからはある程度カップ戦タイトルに照準を合わせた戦いをしていくということかもしれません。この試合のスタメンで青山はクラブのJ1最多出場記録を達成。

一方の湘南は前節から3人入れ替え。前節退場の杉岡は出場停止の一方、契約でガンバ戦に出られなかった谷は戻ってきました。ベンチには町野も復帰しています。

IHの裏をどうするか

さて、3-1-4-2の配置でスタートした湘南は、広島の3バックに対して2トップ+IHの形でプレッシャーをかけてきます。

特に平岡が出てくることが多かったので、広島としてはDHをそこに立たせてWB経由して前を向く展開を作りたかったのですが、湘南は田中が素早くスライドしてきてそれを許さないという設計をしているように見えました。

また、そもそも青山はIHの裏に立たずに下がってくることが多かったので、IHの裏を活用しようという狙いはあんまり見えませんでした。時間が経つにつれてここには柴崎が降りてくるようになりましたが、裏抜けをする選手がいないためCBに捕まえられてしまいます。結果的に前半の広島は藤井までボールをつないでそこで奪われる、という展開が多発しました。
この辺のポジショニングは左DHの川村の方が適応しようとしていまして、IHの裏に入ってボールを受けようとする動きは多く見られました。浅野の裏抜けと合わせて左サイドの方がビルドアップの出口としては機能していたと思います。

ただ低い位置でボールを受けた青山が長いボールで直接状況を打開する場面は何度かあり、立ち位置が多少悪くてもパス精度で何とかしてしまえるのは流石だなーという感じでした。実際前半のプレーエリアは左右のサイドがほぼ均等。左CBの今津がボール出しに苦労していたなど要因は複数あると思いますが、構造的に難しい状況だった右サイドを青山が何とかしていたとも言えるでしょう。

アンカーを誰が捕まえる?

一方、湘南がボール保持したときは3センターvs広島の2DHで1人が浮く形になります。

特にアンカーの田中が構造上浮きやすく、広島はここをどうするかあんまり定まっていない感じでした。青山が出て行って平岡には野上が対応する形なのかな?と思いましたが、それも何か迷いながらやっているような雰囲気で、割とあっさり平岡まで繋がれてゴール前まで持っていかれるシーンもありました。
この辺は僕が広島が3バックに対しての守備が苦手だと思っている理由で、なまじ3トップとWBのところで配置が噛み合っているので、それ以外のところでのミスマッチが解消しづらいんですよね。柔軟性が低いというか。この問題はしばらく付きまといそうだなーという感じがします。

また、湘南はカウンターの際に2トップがボールをキープするのではなく、素早くサイドにはたいてIHやWBを走らせようとする場面が何度か見られました。

広島の3バック相手に潰される前に素早くサイドに展開しようという狙いで、これは広島からするといやだなーという感じでした。ボール保持時に青山はCBに近い位置にいたのでCB前のスペースは空きやすく、それも湘南には有利に働いていたと思います。

前半は湘南が広島の前進を阻みながらゴールに迫り、うまく試合を運ぶことができていました。

サントスの馬力とセットプレーの威力

後半から広島はナッシムに替えてサントスを投入。サイドの深いスペースに流して奥行きを確保する作戦です。

これはうまく効いてまして、前半閉塞感のあったビルドアップにサントスの裏抜けが加わることでサイドからうまく前進できるようになりました。特に右サイドは湘南のCBが柴崎を潰しに出てくるので、その裏のスペースは活用しやすかったと思います。
サントスはフィジカルの強さを活かしてサイドで抜け出してクロスからチャンスを作ったり、起点となってFK獲得につなげたりしていました。
後半途中に野津田を投入してからはセットプレーの威力も増し、広島がゴールに迫り続ける展開となりました。残念ながらスローインから1失点はしてしまいましたが、後半は広島のゲームだったと思います。

今シーズン何度か見られている展開ですが、背後への動きを増やすことで展開を大きく変えられるのは面白いですね。広島としてはこれをハーフタイムを待たずにやりたかったところですが、メンバーが入れ替わっていることもありなかなか難しい部分もあったでしょう。

湘南は広島のビルドアップの阻害とカウンターの設計がお見事でした。後半押し込まれてからはなかなか打開する手立てが見つかりませんでしたが、好調であることもうなずけましたね。

それではまた次回。

#20 【2022J1第20節 横浜F・マリノス×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は横浜FM戦。もし優勝したいのなら勝たなければならない首位との決戦です。スタメンは以下。

横浜FMは前節から小池、エドゥアルド、山根の3人が変更となりました。前線のラインナップは同じですね。一方の広島は前節と全く同じ11人を送り出してきました。前節プレー時間が少なかった藤井がベンチスタートなのは少々意外かもしれませんね。

立ち位置を操作するマリノス

さて、ホームでの対戦時と同様に広島はマリノスのビルドアップ隊に高い位置からプレッシャーをかけていきます。広島のプレッシャーを受けたマリノスは、多くの場面でショートパスによって剥がして前進することを選択しました。

マリノスの中盤3人に対しては広島のDH2人とシャドー1人がマークにつき、SBに対してはWBが出ていきます。マリノスは最終ラインからWGやDHにボールを渡して前進しようとしますが、広島はWBやDHがマンツーマン気味にアタックしてボールを回収しに行っていました。

序盤こそマリノスの中盤3人にマークを攪乱されていましたが、徐々に誰がマークに出ていくかの分担が整理されていき、15分過ぎからは敵陣でプレーする時間を増やせていましたね。

ただし広島のマンツーマン気味の守備には相手のポジショニングにより立ち位置を操作されるという欠点もあります。この試合で特に見られたのはトップ下の西村が広島のDHを連れて高い位置まで走るパターンです。
これで広島のDHは片方がマリノスのDHに付いて敵陣方向へ、片方が西村について自陣の深い位置まで下がっていくことになります。それによって中盤に大きなスペースができており、そこにレオセアラが降りて来たり広島のプレッシングを抜けたDHやSBが抜けてくることがありました。

広島のプレッシングに対してポジショニングを操作してスペースを作り、コンビネーションで剥がしてそのスペースを使う。攻撃的なサッカーを志向するマリノスらしく、正面から広島のプレッシングに対抗してきましたね。

サイドの裏から前進する広島

一方の広島はいつものように相手の背後を突いて前進を試みます。

マリノスのプレッシング隊は3トップが広島の3バックに、SBが広島のWBまで出てきます。広島はシャドーや1トップをマリノスのSB裏に流し、そこに長いボールを出して起点を作るというパターンをよくやっていました。特に左サイドは配給能力の高い佐々木とボールを受けてから冷静にプレーできる東がいたためプレッシングを剥がして前進できるシーンが多かったように思います。相手の背後を突いて前進することが当然のようにできているところには成長を感じますね。
ボールを前進させた後は積極的にハーフスペースに飛び出していくことでチャンスを作っているのも印象的でした。特にCBの佐々木が入ってきたときには高い確率でチャンスができていました。この辺りもシーズンを通して身に着けてきたことができていることが見て取れましたね。

 

速度に感じた差

広島はこれまで築いてきた好調の要因であるプレッシングと相手の背後を突いたボール前進をこの試合でもしっかり発揮していました。それでも結果は0-3の敗北。どこに差があったのでしょうか。

個人的に感じたのはボールを前進させてからフィニッシュワークまでの速度です。マリノスはこれがとにかく速いというのが印象的でした。1点目、2点目のシーンではボールを奪ってから即座にサイドまで展開して素早くクロス、シュートにつなげています。高い位置でボールを持って前を向いたら素早く展開して人とボールをゴール前に送り込むというのがチームとして共有されていることがうかがえます。

スペースがある状態で素早くシュートまでつなげられれば得点の確率は上がります。この試合でもシュート数は広島の方が多かったものの、マリノスはよりスペースがある状態で確率の高いシュートを打って得点を重ねているという印象でした。一方の広島は前進してからシュートまでやや時間がかかっており、難しい状況でのシュートが多くなっているのが無得点の要因なのかな、と感じます。

また、広島とマリノスのボール保持の構造も原因であるように感じました。

広島は3バックに対して3トップがプレッシャーをかけてくるのでDHの野津田が最終ラインに降りて保持を安定させる場面が多く見られました。

最近は大迫を使ってビルドアップすることでこういう場面はあんまり見られなかったのですが、マリノスのプレッシングが厳しかったということでしょうか。こうするとボールは保持しやすくなりますが、前線に人が少なくなってしまい、中盤に大きなスペースができてしまいます。

その結果、ボールを前進できても人を送り込むのが遅くなり、ビルドアップの過程でボールを失った際に中盤でカバーすることが難しくなります。

広島も何度かやられていますが、野津田が下がった時にはCBの誰かを押し上げてプレッシングの基準点を狂わせるとともに相手を惑わせるような動きがあっても良いのかもしれませんね。

ただ、広島はボールを前進させてからが遅いと書きましたがそれはそれでメリットがあるのも事実です。ボール保持で後方に人数を割く分、前進してからはゆっくり攻めることで後方の味方が上がってくる時間を確保できます。これによって敵陣でのプレー時間を増やし、相手を押し込む体制を作れるわけですね。

一方のマリノスは奪ったらゴールまでとにかく早いのが特徴。これによって得点はしやすくなりますが、後方からのフォローが追い付かない分敵陣で失ったときにすぐ奪い返して攻め続けるのは広島より難しい構造になっているように思います。
結果として広島は得点も少ないが失点も少なく、マリノスは得点も失点も多い、というスタイルになっているのかなと思います。このハイリスクなスタイルのマリノスが首位にいるのは、速い攻撃を実現する攻撃陣と、広いスペースをカバーし切れる守備陣の個人能力の高さが間違いなく影響していると思います。

ビハインド時の振る舞いは

2点を失ってから広島はサントスと柴崎を投入してなんとか攻勢を強めようとします。サントスのスピードやフィジカルを活かして無理やり前進できる場面は増えましたが、それまでの長所であったトランジション時の強度やプレッシングの勢いが衰えたことでマリノスにも多くのチャンスを与え、追加点を与える結果になってしまいました。

サントスは全然シュートを打たないなど見ていてやきもきする場面は多いのですが、何でもないロングボールを決定機につなげられることもあり、2点ビハインドの場面で頼ることは十分理解できます。しかし、彼を投入することでプレッシングやトランジションが厳しくなることは予測できますので、そこをカバーできるフレッシュな選手を一緒に投入したかったところ。そういう状況で柴崎が選ばれたのは、スピードやフィジカルに優れたクオリティの高い選手がベンチにいなかったということなのでしょう。

あるいはナッシムの替わりができるCFの選手を入れてそれまでの方針を引き継ぐという手段もありましたが、ドウグラスの不在でそれも叶わず。この試合の広島は0-2となってしまえばサントスを入れてギャンブルするしか手がなかったのかなと思います。そしてそれに負けたということでしょう。

マリノスが交替で投入してきた小池龍太、宮市、藤田、仲川、マルコスジュニオールはいずれも先発ででてきても何ら不思議のないクオリティを持つ選手たちで、ここの選手層の差がテンションの高い90分を乗り切れるかどうかの分かれ目立ったのかなと思います。まあ広島にこの選手層を目指せというのはちょっと無理あると思いますが……

これでマリノスは勝ち点43。鹿島が引き分けたため独走態勢に入りつつあります。一方の広島は首位と直接対決のない10ポイント差ということで、優勝争いは厳しくなりました。現実的にはACL出場権とカップ戦タイトルということになると思いますが、昨年までを考えれば夏の時点でその望みがあることは喜ばしいですね。
0-3という結果ではありますが、ここまでやってきたことはしっかりと通用したと思いますので、これをどう発展させていくのか楽しみは尽きないところです。

それではまた次回。

#19 【2022J1第19節 サンフレッチェ広島×ジュビロ磐田】

はしがき

毎度お世話になっております。今回はジュビロ戦。ガンバ戦で4連勝が止まった後の仕切り直しの一戦となります。仕切り直しと言っても中2日なのですが!スタメンは以下。

広島は出場停止明けの野津田が復帰したほか、右WBに久々に柏が起用されました。1トップはベンカリファにチェンジですね。
磐田は川崎に引き分けた前節から2人変更。大森が1トップ気味で純粋なストライカー不在の並びとなりました。

0トップへの対応は

さて、スタメン発表の段階では吉長や鈴木の1トップの可能性もあった中で大森を1トップに起用してきた磐田は、大森を下ろして0トップにするという手段を取ってきました。

1トップの大森が中盤まで降りて2シャドーの上原と鈴木が高い位置を取ることで広島のマークをぼやかし、中央でフリーな選手を作りやすくします。これによって遠藤や大森といったボール保持で違いを作れる選手が中央で起点となりやすくなります。
広島はシャドーのハイプレスで磐田のビルドアップをサイドに追い込めた場合は比較的うまくボールを奪えていましたが、3バックに落ち着いてボールを持たれると中盤に侵入される場面は割と多かったですね。

ただ、広島はこれに対してCBを過度に動かさずに5-4-1をキープし、構えて守る形を選択。最終的にクロスを入れられても磐田には純粋なストライカーがいないのでCBで跳ね返せばオッケーという意思統一がされているように見えました。
広島としてはセットプレーから先制したのでシンプルに引く選択をしやすくなったわけで、試合展開に恵まれたといるでしょう。
逆に磐田は中盤に侵入した後の崩し方に苦しんでいるように見え、ストライカーの不在が響いている前半という印象を受けました。

WB下げられる問題は?

また、広島がこれまで度々使われているWBが押し下げられたところのスペースも磐田は狙ってきていました。

磐田はシャドーの選手をサイドの高い位置に流すことでWBを押し下げ、そのスペースでWBが受ける形ですね。ガンバはWBを上げてDHが流れてきましたが、磐田はシャドーを流す形で使ってきました。

ただこの日の広島はシャドーが戻ったりDHがスライドして迅速に対応しており、ガンバ戦からの修正を感じられました。ガンバ戦はハイプレスに行くかどうかの判断もあったと思うので、先制して引くという選択が明確になったこの試合ではスライドするという選択を取りやすかったのかもしれませんね。

背後を狙う広島の前進

一方の広島はこの試合では磐田の背後を積極的に狙っている様子が見て取れました。

広島のWBはあまり高い位置を取らずに磐田のWBを引き出し、シャドーやDHがその裏に出ていくという形はよく狙っていましたし、シャドーに対してCBが出ていった裏を1トップのベンカリファが使う場面も良く見られました。

また、右シャドーの森島は結構低い位置まで下がってくることが多く、対面のグラッサはついていくことを躊躇していたため比較的簡単にボールを受けることができていました。

この試合の磐田は序盤からインテンシティが高く広島の最終ラインに対しても強めのプレスをかけてきたのですが、広島が何度も背後のスペースを使っていたことで前半の終盤には最終ラインへのプレッシャーが弱まり、CBやDHがドリブルで持ち上がっていくシーンが多く見られました。

広島はスキッベ監督体制になってから相手の背後をシンプルに狙う意識が高くなっていますが、この試合は相手に背後を意識させることでボールを落ち着いて持てるようになる!というのが強く現れていて面白かったですね。

試合展開の妙

後半になると磐田はジャーメインと杉本を続けざまに投入(杉本はアクシデントによる交替でしたが)してストライカーを増員しますが、大森がいなくなったことで流動性が失われ、広島のCBに対してボールを納めることも難しくなったため前進が難しくなっていきます。

広島はセットプレーとカウンターから追加点を挙げると過労気味だった満田や森島、荒木を下げておやすみモードに。3-0の完勝で連敗を避けることになりました。

この試合の広島を見た感想としては修正しっかりしてきたなーと同時に展開に恵まれたなというのが大きかったですね。
磐田は0トップやWB押し下げと広島の陣形を動かす手段を複数用意してきましたが、セットプレーから先制していたおかげで5-4-1撤退をベースに静観を決め込んで対応することができました。

もしガンバ戦のようにミスから先に失点していたら、いくら修正したとはいえ磐田のビルドアップ隊にプレスを仕掛けて間延びしたところを外されて複数失点、という未来もありえたと思います。

そういう意味では広島が先制して撤退するという選択肢を持てるようになり、そのアドバンテージを活かして勝ち切ったのはお見事でした。連戦真っただ中のこの日程において、走りまくるのではなく試合を落ち着けて勝ち切るという選択ができたのは大きかったと思います。

磐田としては広島の陣形を動かすプランはある程度機能したものの、最終的に点を取る手段に乏しいのが苦しかったところ。ファビアンゴンザレス不在の中、試合を決められる存在が出てくるかがカギを握りそうです。

それではまた次回。

#18 【J1第15節 ガンバ大阪×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回はミッドウィークのガンバ大阪戦。5/25に開催予定がコロナの影響で流れたやつの振り替えですね。僕も現地で見ました。暑かった。スタメンは以下。

広島は引き続き3-4-2-1。野津田が出場停止のところには塩谷を上げてCBに野上を起用、1トップはサントスの選択になりました。
一方のガンバは前節から6人の大幅入れ替えで、並びも3-4-2-1になっていました。4-4-2のイメージが強かったんですが調べてみると3-4-2-1も結構やっていたみたいですね。

背後を取りに行く広島

ゲーム序盤は広島がサイドから敵陣深くまで侵入していくシーンが多く見られました。

ガンバは広島と並びがかみ合っていることを活かしてマンツーマンに近い形でプレッシャーをかけに来たため、広島はそれを裏返すような背後への動きが多かったという印象です。特にガンバの左CBのクォンギョンウォンは森島に対してかなり前に出る形で対応してきたので、その裏を森島や藤井が突く形は多く見られました。
配置をかみ合わせてくる相手に対しての対応としては理に適ったもので、何度かこの形からチャンスを作り出せていました。

ただ、時間の経過とともにビルドアップを落ち着かせるために松本が最終ラインに降り、そのスペースに満田と森島が降り……という形で徐々に重心が後ろに下がっていったのは気になるところ。1トップのサントスもボールを収めようとする動きはありましたが三浦が相手だとそこまで勝率は高くありませんでした。

ガンバとしてはこうなると降りた選手のマークはシャドーやDHに受け渡してしまえばよいわけで、あまり脅威ではありません。また、例えCBが出て行ったとしても前線に残っているサントスがそのスペースを使う様子もあまりなかったため対処は容易でした。

広島としては序盤のようにある程度前に人を残して相手の背後を使いに行くか、前線から人を下ろすなら代わりに誰かを押し出したり、サントスがスペースを使ったりと相手を迷わせる動きが欲しかったところです。この辺りは疲労もあるのかもしれませんね。

広島の配置を操作するガンバ

一方のガンバは人の配置によって広島守備陣のポジショニングを操作する準備がかなり綿密に行われていたことがうかがえました。

ガンバの右サイドは小野瀬が高い位置を取って東を押し下げてそのスペースに斎藤が進出してビルドアップの出口となります。図では満田がプレッシャーをかけに行ってますが、満田が出ていかなければ福岡が持ち上がってこれます。
広島はサイドに出ていく斎藤に対して松本や佐々木がどう対応するか決めかねている様子で、サイドで数的優位を作られてクロスまで持っていかれる場面が目立ちました。
広島としてはここは松本と佐々木を前に出して噛み合わせるか、ハイプレスを諦めて引いてしまうか対応をはっきりさせたかったですね。

また、左サイドでは野上が出てくることを利用して山見や坂本が裏を狙う動きがあり、こちらもシンプルながら効果的だったと思います。

対3バックどうする問題

前半で2点を失った広島は後半からドウグラスヴィエイラとベンカリファを投入して3-1-4-2にシフトします。前線への圧力を強めようとしますが、成果としては微妙な感じでした。

ガンバは前半に見せた斎藤をサイドに出してくるパターンに加えて、東口をビルドアップに組み込んで福岡をサイドに押し出してくるパターンも持っていました。広島の3-1-4-2だとWBが下げられた場合ここには2トップがスライドするかIHが出ていくかになり、なかなかの移動距離になって苦しいところでした。3-4-2-1のままマンツーマンみたいにした方が分かりやすかったでしょうか。

斎藤をサイドに流すパターンとの共通点としてはWBが高い位置を取って広島のWBを押し下げ、そこで空いたスペースを使うこと。今期の広島は3バック相手に何度かこの形でやられていて、おそらく今後も狙われるでしょう(今日の磐田戦とか)。なまじWB同士が噛み合っているため、受け渡す判断をすると他のところでズレが生じてしまうので対応が難しいのだと思います。

 

また、降りてくるダワンに対しては森島がついて行っており、その判断はとても良かったと思います。しかしボールを受けたダワンをフリーでターンさせてしまうことも多く、ここを起点にプレスを外される場面も見られました。とはいえこの試合の森島のタスク量でさらにダワンを潰せはちょっと酷な話なので、ここはダワンを褒めるべきかなと思います。

今後に向けて

ガンバは準備してきたビルドアップがしっかりと機能して連敗ストップ。GKを組み込んだビルドアップなど、片野坂監督のイメージにぴったり合う試合運びで今後の復調を予感させました。

広島は結局ガンバのビルドアップを抑え込むには至らず。クロス対応のミスから失点したのはもったいなかったですが、勝つのは厳しい内容で0-2というスコアはまあ妥当かなと思います。

今シーズンなかなか勝てていない3バック相手に加え、ここに来て出ずっぱりだった主力にも疲労が見え始めた中、7月の連戦をどう乗り切っていくのか。楽しみに見守りたいと思います。

それではまた次回。