#03【2020J1第4節 サガン鳥栖×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。2020年は全試合やりたいとか言ってたのにもう1試合飛ばしてしまいましたね。まあこの過密日程ですし……一応Twitterに簡単な図をあげたのでセーフということにしたいところです。

さて今回は鳥栖戦です。鳥栖は未だ勝ちなしかつ無得点と苦しい状況のようですが、どのような試合だったか振り返りたいと思います。スタメンは以下。

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鳥栖は4-2-3-1。原川にやられた記憶ばかりがあると思っていたらベンチスタートなんですね。一方の広島は前節から3人変更。連戦のさなかですがDF陣はそのままで来るあたり信頼が表れています。

鳥栖の広島対策?

さて、この試合では広島がボールを持った際の鳥栖の追い込み方に対策が垣間見えました。

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広島は3バックの中央である荒木がボールを持った際に豊田が強烈なプレッシャーをかけてサイドに逃げさせます。サイドのCBには鳥栖のSHがプレッシャーをかけ、WBにはSBが出てくることでボールの前進を阻害します。

広島はもともとWBにボールを預けてから展開するビルドアップを多用するため、そのルートを潰しに来たのだと思われます。広島としては鳥栖のSBが出てきた裏を使いたいところですが、鳥栖がきっちりスライドしてくるため中々それも難しかったものと思われます。

ただ、サイドがふさがれている分中央のシャドーに簡単に縦パスが入ることもありましたし、GKの林を使って数的優位を確保してプレス回避していることもありました。こういうのをアドリブの単発で終わらせるのではなく、試合中に狙いどころを共有して修正できるようになってもらえると頼もしいなと思います。

正確さと個の強さ

GKをビルドアップに使うという点で言えば鳥栖はより積極的に行っていましたね。

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CBが開いてGKが中央に位置することで3バックのような形になり、SBが高い位置を取ります。広島の3トップが同数プレスをかけられる形ですが、ここで行ってしまうと中央の数的優位を活かされたり最終ラインで1vs1の勝負を仕掛けられる局面が発生するため迂闊にプレスをかけられません。鳥栖としてはプレッシャーが来れば前に蹴ってアタッカーを走らせればよく、プレッシャーが来なければ中盤と連携しながら落ち着いて前進を図れるという理想的な二択を迫りながら試合を進められていたのではないでしょうか。

ただ前進したとして、鳥栖のアタッカーは対人に絶対の自信を持つ広島のCBと1vs1で戦うことになります。ここがなかなか突破できなかったことが鳥栖の攻撃が最後にうまくいかない要因だったのではないでしょうか。

正確なポジションチェンジ

そうした中で輝きを放っていたのが鳥栖の左サイドでのポジションチェンジです。左SBの内田と小屋松はどちらかが外に開けばどちらかが中央に絞るというポジショニングの基本を押さえつつ、さらにそこからのポジションチェンジで崩しにかかるという連動性を見せました。53分のシーンを例に出します。

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ここからさらに内田が中に入ってリターンを受け、本田は裏に走る

サイドでボールを持った内田に対して、インサイドに位置していた小屋松が外に開きながらの裏抜けで野上を引っ張ってパスコースを作り、そこにトップ下の本田が降りてきます。荒木は中央で豊田とマッチアップなのでここは青山が見ていますが、さらに内田が中央に入ってきてリターンを受けることができます。

この一連のシーンにおいて広島は東が近くにいたのですが、対面の選手がいない状態だったので見ているだけになってしまいました。広島の守備は人意識が強いだけに、自分の対面の選手が遠くにいる場合はこういった状況が起きやすくなるかもしれませんね。

このシーンでは内田に頑張ってついて行ったハイネルがボールを奪うのですが、すぐさま松岡と内田に囲まれてボールを失います。こういった切り替えの際の松岡や梁の迅速な対応もこの試合光っていたと思います。広島は試合の終盤に速い攻撃から立て続けに決定機を迎えるのですが、梁がいなくなったことと無関係であるとは思えません。

鳥栖はDHの2人が瞬時に中央のスペースを消してしまうため、広島側が横パスを1~2本繋ごうものならすぐにカウンターが封じられてしまいます。ボールを失った際の対応も行き届いている鳥栖のクオリティに驚くと同時に、広島はカウンターの時にまずどこを目指すのか、チームとして明確な基準が欲しいなと感じました。

終盤のカウンター攻撃も決まらず試合は0-0のまま終了しました。

試合を終えて

いやあ、鳥栖が大変良いチームで驚きました。鳥栖戦は地味な試合になることも多かったので今回も固められて塩試合かと侮っていました。申し訳ありません。このチームが得点ゼロの2分け2敗というのはちょっと信じがたいものがあります。ただ点を取るというのはアタッカーの個人勝負みたいなところもありますからね……豊田が今シーズン初先発だったのも、その辺の事情があるのでしょうか。

さて広島のブログなのにまた広島のことを全然書きませんでしたね…… 正直前節の大分戦からは特に個人の能力とひらめきに依存している部分が多いように感じられます。柏のケガによって去年チームをけん引した左サイド攻撃が機能不全に陥っているのも大きな要因でしょう。

ここまではカウンターからうまく点を取れましたが、今日みたいにきちんと対応してくるチームだとカウンターすらも個人能力依存では厳しくなってきます。チームとしてどういう形で守り、ボールを奪って得点するのか、そうした意図を共有できるかが試される時期が来ているのかもしれませんね。

ではでは