#17 【J1第29節 清水エスパルス×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。前節は神戸に快勝したサンフレッチェ広島、今節は残留に向けて負けられない試合が続く清水エスパルスのホームに乗り込みました。日本平が鬼門と呼ばれていたのも昔の話、ここ数年の対戦成績はそんなに悪くない……ような気がします。多分。そんな試合、スタメンは以下。

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清水の並びは4-2-3-1、広島はいつもの3-4-2-1です。お互いにドウグラスがワントップというスタメン。清水はドウグラスの他にもファンソッコが広島に在籍経験を持っています。広島もベンチに座る清水航平野津田岳人が清水に在籍していたという、古巣対戦の多いメンバー編成でもありますね。

 

清水のスペースの埋め方とサイドチェンジ

さて、この試合は前半から広島がボールを保持してはいましたが、決定機の数では清水の方が多いという展開になっていました。広島がうまく攻められなかったのは、清水のボール非保持におけるスペースの埋め方に原因があると感じました。

 

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高い位置に張ったWBにボールが出れば清水のSBが対応に出てくるので、そうして空いたスペースにシャドーを走らせる、というのが広島がいつもやっている攻撃です。それはこの試合でも見られたんですが、清水の守備陣はきちんと対応してきました。SBが出ていったところに走るシャドーにはDHがついていき、DHが空けた場所はSHが埋め、さらにトップ下や逆サイドのDHがスライドして埋める、という具合です。

特にサイドでSB、SH、DHが回旋するようにスペースを埋める動きは効果的で、広島はなかなかスペースを見つけられていない感じでした。若干アドリブな感じもありましたが、スペースが空いたらそこに人をスライドさせて埋めよう!という意思統一はなされていたように思います。

これに対して広島のボール保持でよく見られたのはサイドチェンジによる前進でした。

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清水の守備陣は片方のサイドにスライドしてスペースを埋めてくるので、どうしても逆サイドには大きなスペースが空きます。そこを青山やハイネルからのサイドチェンジで活用しよう、ということです。オーバーロードアイソレーション、みたいなことを考えていたかは定かではありませんが、密集してスペースを埋めてくる相手に対しては有効なやり方だったと思います。サイドチェンジしてからも結局中央は埋められてるので点はとれませんでしたが、守備陣を揺さぶることはできていたと言えるでしょう。

 

とまあ、チャンスが作れないながらも悪くはないかな~と思っていましたが、30分頃にFKから失点。守備にリソースを割いていた清水はそこまで複雑なボールの動かし方をしていたわけではないのですが、FKを与えたシーンの他にも何度かブロックに侵入されてしまいました。もうすこしボール保持率が下がるとこの問題が表に出てきそうな感じですね。

効いてきたジャブ

 さて、失点した後からの話ですが、広島はCBの佐々木がボールを持って前に出てくる場面が目立つようになります。こうすることで、CBからライン間にいるシャドーに直接パスが入る場面が目立つようになります。ここにパスが入ればWBに渡してからの裏抜けもできますし、同点ゴールシーンのように中央から突破していくことも可能です。

※前半途中に六平に替わって中村が入っていますが、竹内に替わって入ったものと思いこんでいました。そのため図には六平が残っていますが誤りです。申し訳ありません

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同点になったシーンはライン間で受けた森島がドウグラスヴィエイラと共にCBに対して数的優位を作ってパス交換、その間に中に入ってきた柏に渡して突破という流れでした。清水は序盤については前からプレッシャーをかけて攻撃をサイドに誘導し、引いた時にもきちんとMF間は狭くできていたのですが、時間が経つにつれてこのスペースを空けてしまうことも多くなってきていました。こうなると今の広島はうまくコンビネーションで崩せます。

川辺、森島の2シャドーはフィニッシュだけがうまくいかないことも結構あるのですが、このシーンでは川辺がスペースを空けて柏のパスを待っており、それも非常に良かったと思います。

篠田監督の思惑とは

61分頃に、篠田監督が「4-1-4-1に変更しよう」という主旨のことを言っていることが伝えられます。が、試合を見ていた限りではそういった変更がなされていることは感じ取れませんでした。

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押し込まれてしまってボールを前進できない状況だったので、前半の立ち上がりのように前からプレッシャーをかけようとしたのではないかと思われます。押し込まれた状態で使われているスペースを消したいなら4-1-4-1にせずともトップ下を戻して4-5-1のようにすればよいと思うので、そうではなく広島の3バック+2DHに対してプレスはかけやすい並びだと考えて採用したのだと捉えています。

ただ実際にピッチ内にいる選手たちはプレスに行けなかったため、変更する前とさほど変わらずに守っているように見えてしまったのだと思います。この辺は広島に押し込まれた場合にどうするかという点について、ピッチの内外でズレが発生しているのかもしれないと感じました。

清水は75分に中村に替えてジュニオールドゥトラを投入、攻撃に厚みを加えようとします。それを見た城福監督は3分後に稲垣に替えて清水航平を送り出し、川辺をDH、左シャドーにハイネル、右シャドーに森島、右WBが柏と並びを大きく変更します。得点能力のあるハイネルをシャドーに置くことでこちらも得点を狙いに行った形でしょうか。

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するとそのわずか2分後にテコ入れした右サイドから逆転ゴールが生まれます。ハーフスペースを裏抜けした森島に柏からパスが出ると、柏はすぐに中央に入ってリターンを受けてクロス。ドウグラスヴィエイラが合わせて逆転しました。清水としては裏抜けする森島にはDHがなんとかついていきましたが、そのDHが空けたスペースを埋められずに使われての失点となりましたね。もしかすると城福監督はジュニオールドゥトラがこうしたスペースを埋める守備は得意ではないと分かっていて、柏と森島のユニットを右に移したのかもしれませんね。

その後は広島が守備を固め、なんとか失点せずに逃げ切ることに成功しました。

試合を終えて

そんなわけで広島の逆転勝利となったこの試合。ボールを保持して相手を揺さぶり続けることで守備陣を息切れに追い込んでの2得点ということで、素晴らしかったと思います。清水側は苦しい展開であることは分かっていながらも、有効な対策を打てなかったことが響いた形でしょうか。ボールを持たれ続ける展開であっても先に2点目を取れていれば違った展開になったかもしれませんが、何にせよなかなか難しい試合ではあったと思います。

で、この試合の広島を見ていて気になった点が2つあります。それが

①ボール持てない時にどうする?

②ハーフスペース埋められた時にどうする?

の2点です。

①についてですが、今の広島はボール保持していればまあそこそこどのチームからでも点が取れそうな気はしています。なんですけど、ボールを持っていない時の守り方でまずいミスをすることが続いており、たぶんシーズン序盤のようにボールを相手に渡して耐え続ける、みたいなことはできないような気がしています。なのでどうやってボールを奪うかを考えないといけないと思うのですが、これについてはたぶん川崎戦で見られるでしょう。ハイプレスで奪いに行くのか、それとも撤退したら守り切れないという僕の推測は間違いだったと証明して見せるか。どちらもできなければ待っているのは横浜戦の再来でしょうし、どういった策があるのか楽しみに待ちたいです。

②については今節の清水が序盤にやったようにスペースを消されたときにどうやって崩すのか、です。まあ今回のように4-4ブロックでスペースを埋め続けるというのはなかなか続かないと思いますが、5バックにされるとか、名古屋戦みたいにきっちりスペースを消してくるチームに対してやることが明確に決まっているのかどうかも気になります。というかその場合は相手の守備を疲弊させないといけないと思いますが、相手守備のどの部分に負荷をかけていくのか、みたいなことが整理されていてきちんとできるかどうかに注目したいと思います。これは残りのどの試合でも見られる可能性がありますね。今季注力してきたボール保持の部分でさらにレベルアップできるかどうかの重要なポイントだと思います。

天皇杯ルヴァンカップも消えた今、今シーズンの残りは正真正銘あと5試合。タイトルという目に見える結果はなかなか厳しい状態ですが、だからこそ内容にこだわり、今シーズン積み上げてきたものが見える試合となることを期待したいです。

それではまた、次回があれば。