#07 現在地 【J1第17節 鹿島アントラーズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今節でJ1も折り返しですね。鹿島とはACLを含めて3連戦になりますが、ACLは観戦環境がなくて見られませんでした。なのでこの試合だけを見て書こうと思います。ひとつよしなに。

で、スタメンは以下。

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広島は荒木リベロ、吉野と柴崎のDH、川辺のシャドーと変更点多め。鹿島は相変わらずの442ですが、若い選手の台頭が印象的なメンバーに見えます。特に左サイド。

不均衡なサイドの攻防

さて、試合は開始直後にいきなり鹿島が先制します。ボールが落ち着かない状態で入った吉野からの縦パスをカットしてカウンター、一気に中盤を通過してのクロスから最後はレアンドロという流れでした。この得点によるものかどうかは定かではありませんが、広島がボールを保持して試合を進め、鹿島が対応するという構図が明確になります。その中で、広島のボール保持および鹿島の対応は左右のサイドで大きく異なったように見えました。

まず広島の右サイドについてですが、こちらは鹿島が狙い通りにコントロールしている印象を受けました。具体的には右CBの野上がボールを持つと鹿島はSHの山口とSBの小池が縦にスライドしてアプローチしてコースを消し、さらに中央のレオシルバも連動して攻撃を封殺するという場面がたびたび見られました。これが起こった原因として、広島の右サイド陣の立ち位置が挙げられます。

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DHの吉野は鹿島のFWとMFライン間を使おうとするのですが、ここにシャドーの川辺も降りてきてしまい、使いたいスペースが被ってしまっていたんですね。もともとDHということもあってか川辺は列を降りる動きをかなり頻繁に行っており、裏抜けは少なかったため攻撃に深さを作ることができていませんでした。ハイネルもボールに触りたいのか低いポジションを取っていることが多く、広島の右サイドは狭いエリアに3人が密集しているような状態になっていました。こうなると鹿島のDF陣は狙いどころを絞りやすく、結果として右からの前進はほとんど見られませんでした。

一方、広島の左サイドは何度か効果的な前進を見せていました。こちら側はレアンドロが出てこないので佐々木が比較的自由にボールを持てたという事情もあるのですが、何より利いていたのは森島の位置取りでした。

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常にDFとMFの間でボールを受けようと動き続け、時にはシンプルにDFラインの裏へ抜けようとする動きも織り交ぜることで、鹿島のDF陣には簡単に前に出て行けないように、またレアンドロが簡単に外に出て行けないようにピンどめすることに成功していました。この動きによって柏は大外、柴崎はFWとMFの間と各々の使うスペースもきちんと分担でき、佐々木は常に選択肢を持ってプレーできたのではないかと感じました。

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また、柏にボールが渡った際には必ずと言っていいほどCBSB間に走っており、柏がカットインしたり柴崎が出てきたりとその後の展開につなげるための動きも怠りませんでした。実際に広島の同点ゴールもこの形で、ボールを受けた森島が鹿島のCBを釣りだしてから柏にはたいたことで柴崎が時間とスペースを得ることができ、そこから逆サイドのハイネルに展開できました。左サイドでの整備された動きによって鹿島の圧縮守備を崩すことができた、広島にとっては狙い通りの同点弾であったと言えそうです。

ボールを保持する鹿島

同点になったことで、鹿島もボールを保持する姿勢を見せ始めます。ボール保持の際にはDHを落として3バック化していました。鹿島が4-4-2のままであれば、広島はシャドーがSBを、WBがSHを捕まえれば前方からプレスをかけ、CBは後方で攻撃に備えることができました。しかし、鹿島が3バックになったことでシャドーがCB、WBはSBを捕まえなければならなくなったためCBも前方にスライドする判断を迫られるようになります。この一連のスライドがうまくいかないことが何度かあり、鹿島はそこを突いて裏抜けや土居の間受けによってチャンスを作り出していました。

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後半に入ってからは広島は自陣に引いてブロックを構えることが多くなり、鹿島は攻めあぐねることが多くなります。広島は広島で相手のハイプレスが弱くなってきたから落ち着いてボールは持てるけどDHSH間が前半よりも閉められていて使えず……といった感じでやや試合が膠着する様相を見せます。そんな中でセットプレーから小池のゴラッソによって鹿島が勝ち越し。広島は再び得点を奪いに行くための変化を余儀なくされます。

4-4-2の是非

追い詰められた広島は川辺に替えてパトリックを投入し、4-4-2に変更します。

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高さのある2トップを鹿島の2CBにぶつけ、2人いるサイドからクロスを多用して攻めようということなのだと思いますが、この試合に関していえばほぼ機能していなかったという印象です。SBとSHがクロスを上げるという以前にそこまでボールを運ぶことができず、高い位置で潰されてカウンターを受ける場面が目立ちました。4-4-2同士のぶつかり合いとなったことで鹿島としても捕まえる相手がはっきりして守備がしやすくなり、得意のショートカウンターが決まりやすい展開になったものと思われます。個人的には2トップにしたいなら3-1-4-2のような形の方が、この試合の鹿島相手ならボールを前に運びやすくなってチャンスが増やせたんじゃないかなあと思いました。

いよいよ終盤になり、なりふり構っていられなくなった広島は後方から2トップへのロングボールも用い始めます。すると2トップが守備陣に対して脅威を与えられるようになり、終了間際にロングスローから2トップがヘディングで繋いでからの柏のゴールで同点に追いつきました。鹿島としては目に見えて疲労していたレアンドロが自陣まで戻ってこられず、最後の最後で人数が足りなくなってしまいました。後半はおおむねゲームを支配できていただけに勿体ない失点という感じが強いですね。

試合を終えて

なんとか勝ち点1は取れた広島ですが、J1も半分が終わり、現時点での立ち位置が良く表れているような内容だったかなと感じます。左サイドは自分のタスクを理解している柏と森島、さらに機転の利く柴崎がいてよく機能していた一方、右サイドは決まり事らしきものが観測できず、かなり危うい状態でした。また、ボールを保持された場合に相手の配置に対応して主体的に奪いに行くことは得意ではなく、撤退してしのぐ姿勢が今日も見られました。撤退守備自体は悪いことではないのですが、失点してしまった後に出してきたプランBがあれだけ機能していなかったことを考えると、撤退してロングカウンターに懸けるよりは相手からボールを取り上げる仕組みを実装して当初の3-4-2-1で戦う時間を増やした方がいいんじゃないか、とは思いました。

鹿島の方は前半は広島のボール保持にやや苦しめられたものの、失点以降はあっさりボール保持に切り替えて見せ、それが手詰まりになりかけるとセットプレーから1点もぎとっちゃうという展開が見覚えあってなんというか鹿島だなあと思いました。膠着した試合がセットプレーで動くのを見るたびにギャレス・サウスゲイトの正しさを思い知るというか、サッカーで大事なことは案外そのあたりなのかもなあということがよぎる試合でした。

それではまた、次回があれば。