#12 サンフレッチェ広島の守備は何がまずかったのか?後編【2020J1第16節 川崎フロンターレ×サンフレッチェ広島を受けて】

はしがき

平素より大変お世話になっております。後編です。前編を読んでいない方はそちらを先に読んでもらうと分かりやすいかなと思います。

syukan13noblog.hatenablog.com

さて、前編ではサンフレッチェ広島の守備について2つ問題があると書きました。簡単に振り返ります。

①ボールの奪いどころが定まっていないのか突然選手が飛び出してボールホルダーに食いついてしまうことがあり、その裏のスペースを使われやすい

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②WBがサイドに釣り出されてもCBはカバーに行かず、DHが最終ラインに降りてカバーすることになっている

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※ちなみに前編で書き忘れてしまったのですが、DHがカバーに降りてしまうといわゆるバイタルエリアが空いてしまってマイナスのパスに弱くなるというデメリットもあります。これもけっこう問題。

 

失点は少ないけれど

さて、前編を読んだ方の中にはこう思った方もいるのではないでしょうか。「広島は失点少ないし、別にいいんじゃない?」と。

たしかに広島は今シーズン15試合で19失点と、失点は少ない方から数えて5番目です。試合数のばらつきもあるので正確には比較できませんが、少ない方であることは間違いないでしょう。守備の構造がおかしいのであればもっと失点するはずだと思われるかもしれませんが、僕はこの失点の少なさをDFの個人能力の高さによるものであると考えています。

つまり構造的には崩れていることも多いですが、3CBを中心としたDF陣が頑張って最後の最後で何とか食い止めている、という状態でここまで来ているのではないかということです。そういう意味では3CBを中央に残していることが生きているのかもしれませんが、それによって守備組織が崩れるのであれば本末転倒ではないでしょうか。
現状はあくまで個人能力の足し算で守っているので、それを上回る個の力で殴られたり、構造的な弱点を執拗に狙ってくる相手からゴールを守り切ることは難しくなると考えています。せっかく優秀なDF陣がいるのだから組織の決壊をぎりぎりで食い止めるような戦い方をするのではなく、組織として連動することでより安定した守備を構築してほしいと思っています。

 

じゃあどうすればいいのよ?という話

じゃあどうやって守るのかという話になるわけですが、やはり基本に忠実にいくべきではないでしょうか。一言で言えば味方が出ていったスペースを周囲の絞り/スライドによってカバーすることが効果的であると考えます。

①の問題点については、主にDHが突然プレスをかけてしまい、その後ろのスペースを使われることが問題となります。これを防ぐために、まずDHがどのエリアまで出ていくのかをある程度決め、DHが出ていったら周囲は中央に絞ってカバーし、スペースを消しに行くことが必要になるはずです。

 

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DHが前に出すぎないこと、周囲の選手が絞ってくること。この2つにより、いきなりライン間を使われて失点というケースは減らせるのではないでしょうか。

また、これは最終ラインにも同じことが言えます。

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もし中盤を通過されて図のようなパスが入った場合には、CBが出ていって対応することになります。最終ラインに5人いれば、CBは出ていっても後ろに4人いるので迷いなく出ることができます。これは5バックの大きなメリットの一つであるといえますね。
広島も現在このやり方でCBが出ていくシーンをよく見かけます。それは良いのですが、この時にも周囲のカバーが不十分に思えます。CBが出ていった時後ろは4人なのですから、きちんと絞ってスペースを消し、4バックに近い形に変化してスペースを消せばより安定感が生まれることと思います。

 

そして②の問題点については、やはりWBが出ていったスペースはCBを出してカバーすることで防ぐ方が良いと考えます。

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WBが出ていったスペースをCBがカバーしたとしても、まだCB2人と逆サイドのWBが残っているはずです。彼ら3人がしっかりとスライドして中央まで戻ることで、4バックで守っているのと同じ状況を作り出すことができます。また、このやり方ならDHを最終ラインまで降ろさずに済むので、マイナスのクロスもしっかりケアすることができます。こうすることで、②の問題により空くことになったスペースをしっかり埋めることができます。

味方の選手が出ていったスペースを周りでカバーして塞ぐ、そういったスペースに注目した現代基準の守備こそが今の広島に必要なのではないでしょうか。

まとめ

味方が出ていったスペースを周囲が絞ったりスライドしたりで埋める、というのはいまや確立された守備の常識であると言えます。優秀なDF陣がいながらこうしたセオリーがないまま個人の頑張りで守っているのは非常にもったいないと感じるので、何とか改善してほしいと思っています。
人に対する意識が強いと言われることが多い広島の守備ですが、こうしたスペース管理に対する意識の希薄さによって、相対的に人に対する意識が強く見えるのではないかと書いていて感じました。

Jリーグの戦術的なレベルは上昇の一途をたどっており、今後こうした構造的な弱点はますます多くのチームに狙われることでしょう。そうした強敵たちに、サンフレッチェ広島の優秀な選手たちが連動して立ち向かっていく姿が見たいものです。

それではまた次回。

#12 サンフレッチェ広島の守備は何がまずかったのか?前編【2020J1第16節 川崎フロンターレ×サンフレッチェ広島を受けて】

はしがき

毎度お世話になっております。
さて今節ですが、知っての通りサンフレッチェ川崎フロンターレと対戦し1-5の惨敗を喫しました。川崎は今シーズン多くの試合で3点以上を奪っているチームであり、5点以上取った公式戦がこれで6試合目です。なので「川崎強かった!仕方ない!」で済ませても良いのですが、「広島の守備は何かおかしい」という声が各所から聞こえてくるように、失点時の対応がどうにも変だったことが気になりました。

で、それについて考えていたところ他の広島サポの方から情報提供も頂き、どこがおかしいのかが何となく浮かび上がってきました。

ということで今回は趣向を変えて、広島の守備がどうおかしくてその結果どうなっているのか、をまとめてみることにします。

一体何がまずかったのか

先に結論を書くと、広島の守備についてまずいところは大きく2つあると思っておりまして、それは

①ボールの奪いどころが定まっていない?

カバーリングの設計が狂っている?

この2つです。
この2つが原因で広島の守備には時折不審な点が見られると考えました。以下で順番に説明していきます。

①ボールの奪いどころが定まっていない?

ボールの奪いどころと似た言葉として「守備の基準点」というのもありますね。つまり、「相手選手のうち誰がボールを持った際にプレッシャーをかけ始め、どこに追い込んでボールを奪うのか」についての約束事が不完全なのでは?ということが言いたいわけです。

広島のボールの奪い方の1つとして、5バックで構えた状態から相手のSBにシャドーがプレッシャーをかけ、連動してWBが相手のSHまで出ていき、DHは相手のDHを捕まえるというものがあると思っています。

f:id:syukan13:20200902212925p:plain仙台戦で使った図ですが、こんな感じですね。5バックで構えたところからSBの蜂須賀がボールを持った際にシャドーのヴィエイラが寄せていき、SHの石原はWBの茶島が監視。DHの椎橋を川辺が見て、間に入ってくる関口はCBの野上が出ていって対応します。図ではペレイラがCBのところにいますが、ペレイラがCBへのコースを切りつつ蜂須賀に寄せていけばボールを取れそうですね。城福監督はこのような設計でボールを奪おうとしているのだと考えていました。

ところが、広島の試合を見ているとこのパターン以外にも唐突に中盤の選手が前に出ていってプレスをかけることがあります。広島サポであれば心当たりがあるのではないでしょうか。

www.youtube.com

例えば横浜FM戦の1失点目(動画0:37~)。直前までDFラインに吸収されるほど近い位置にいたハイネルがいきなり猛スピードで扇原にプレスをかけ、その裏のスペースを使われての失点です。

ここまで突発的なプレスはそんなに見られませんが、広島のDHが低い位置にいるボールホルダーにふらふらと寄せていって、その裏や脇にスペースが空いているということは割と良く見られる現象です。サイドに出た時がボールの狙いどころだとは思うのですが、中央にボールがあるときにどうするのかがあまり決まっていなくて、DHが思い思いの判断で行動した結果こういう現象が時折みられるのではないかと考えています。

カバーリングの設計が狂っている?

そして2番目。これこそが、「広島の守備は変」と感じられる原因なのではないかと思います。
まず、川崎戦の2失点目を確認します(動画0:47~)。

www.youtube.com

この失点を図に起こすと、まずサイドで三笘とハイネルが1vs1になります。
(フィールドを白くしてみました)

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三笘との1vs1をハイネルは止められず、内側に侵入されます。まあこれは仕方ないと思うんですが、この時に注目してほしいのは野上と川辺の動きです。

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ハイネルが外された後に最も三笘の近くにいた野上はボールにアタックするのではなく、中央に走りこむ大島を気にしつつ逃げるように中央に戻っていきます。逆に、大島を視界にとらえていた川辺が三笘を全力疾走で追いかけて止めに行きます。
結局止めきれずにクロスを上げられて中でレアンドロダミアンに合わせるのですが、この時の対応がどうもおかしい。普通に考えれば

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こうで良いはずなんですよね。三笘に最も近い野上がカバーに入り、大島の動きを見ていた川辺がそのままついていく。これなら移動距離が短くて済むため、三笘に早めにプレッシャーをかけてミスを誘えたかもしれません。

ではなぜこうしなかったのか?野上が大島をマークしていてそのままだったからかと思っていたところ、こんなサイトを紹介していただきました。

www.jleague.jp

2016年に城福監督が執筆したコラムですね。このコラムにおいて、城福監督はこのように述べています。

「全てのシーンに共通していることは、サイドバックが空けた穴(スペース)をボランチがカバーしている点です。攻撃側のチャンスになり得るシーンでしたが、サイドバックが外へ引き出されても、しっかりとボランチが空いたスペースをカバーすることで、センターバックのポジションは動かされずに、最終ラインは4枚で相手の攻撃に対応することができます」

 

このコラムを見てから先ほどの失点シーンを見ると、違う見方が浮かび上がってきます。つまり、「ハイネルが空けたスペースは本来川辺がカバーすべきもので、野上は本来守らなければいけない中央に慌てて戻っていった。つまり、川辺と野上の2人がとった行動はチームの決まりごとに従った正しい動きである」という見方です。

コラム上で城福監督は、CBが中央から動かされていないことによって安定した守備ができたと語っています。そこで、城福監督が守備ブロックの構築において優先しているのが「CBを中央から動かされないこと」だと考えると、野上と川辺の不可解な動きについても合点がいくのです。CBは中央から動いてはいけないので、野上は慌ててゴール前に戻って行った。そして、WBが空けたスペースはDHの川辺が埋めに行った。と考えれば辻褄は合うように思えます。野上は大島に釣られたのではなく、自分が本来埋めるべき場所に戻って行ったのだと考えられるのです。

これと同じような形の失点として思い出されるのがセレッソ大阪戦の1失点目(動画0:20~)。

www.youtube.com

坂元の切り返しでWBの清水が振り切られ、クロスを上げられてニアで合わせられての失点です。このシーンでも清水が出ていって空けたスペースに対してCBはスライドせず、青山が埋めようとしているように見えます。しかし間に合っておらず、坂元はほぼフリーの状態でクロスを上げています。

さて、この2つの失点に共通することとして、CBがスライドしていないことの他に「DHのカバーが間に合っていないこと」「CBは3人きちんと中央にいるのに失点していること」が挙げられます。たとえCB中央から動かされまいが、クロスを上げる選手がフリーで質の良いボールを上げられたりドリブルで深い位置まで侵入されると失点する可能性は十分にあるということですね。そしてそれを防ぐためのカバーリング要因であるDHは移動距離が長すぎて間に合っていないのです。
つまり、「WBが空けたスペースをDHが最終ラインに降りてカバーし、CBは中央から動かない」という約束事は不完全であり、カバーが間に合わずクロッサーをフリーにしてしまう可能性が大いにあると言えるでしょう。こうした事実を鑑みて、カバーリングの設計が狂っているのではないか?と考えました。

じゃあどうやって守るのが良さそうか、について書こうとしたのですが、すでに3,000文字になっていて書くのも疲れたのでとりあえず今回はここまで。後編に続きます。

#11 【2020J1第15節 サンフレッチェ広島×清水エスパルス】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は清水戦です。
前節にようやく久々の勝利を手にしたサンフレッチェに対し、清水は4連敗中と不調の様子。クラモフスキー監督のもとボール保持の方向に舵を切っている最中で難しい状況のようですが、どんな試合になったか振り返っていきたいと思います。

スタメンは以下の通りです。

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広島は井林、エゼキエウが初先発のほか、柴崎、東を先発で起用してきました。ミッドウィーク開催なのでターンオーバーを意図したものかもしれませんね。一方の清水は4-2-3-1。後藤や大久保って今清水いるんだな……という感想を抱きますね。どういう配置でビルドアップしてくるのでしょうか。

可変で守る広島

さて、この試合では広島はこれまでの試合とは違う守り方をしているように見えました。普段の広島は5-4-1で撤退するかシャドーを相手のSBに当ててプレッシャーをかけるという守り方をしていますが、この試合ではまた違ったバリエーションが見られました。

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それがこの形。いつもの5-4-1から片方のシャドーが戻らず前に残っている5-3-2のような形です。特にエゼキエウのほうは顕著で、自分のサイドにボールが来てもSBに詰めていかず後ろに任せるようなシーンも見られました。

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その場合はWBの東が縦にスライドして出ていき、全体をボールサイドにスライドさせて4-4-2に近い形になります。

この守り方のメリットはやはりカウンターに備えて前線に2人残せるという点でしょう。いつもの5-4-1は堅さこそあるものの陣地回復にはペレイラヴィエイラのキープ力に頼る必要がありますからね。
この形であれば前線への長いボール以外にも、良い意味で中途半端な位置を取ったシャドーにボールを渡して前を向いてもらうことが可能になります。広島の先制点なんかはまさにその形でしたね。

一方で脆さを見せることもたびたびあり、全体が過剰にスライドしたことで中央を豪快に破られた12分のシーンなどは危なかったですね。この辺は人に対する意識の強いところが出たかなと思います。

また、後半には前に出てきたシャドーの裏に斜めにパスを差し込まれるようなシーンもあり、うまく分析されて対処されているなという感じでした。

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55分のシーンですが、右サイドからサイドを変えられてスライドする前に前に出てきたエゼキエウの裏にパスを通されています。
縦と横のスライドを同時に行う必要がある以上、こうした斜めのパスによって空いているスペースを使われるというシーンは今後もあるのではないかと思われます。
個人的には5-4-1だろうがやられるときは普通に崩されているので、多少守備が脆くなるデメリットよりもカウンターに出やすくなるメリットの方が勝っていてこの守り方は良いのではないかと感じます。

あとはプレスをかけに行ったのに結局全然奪えないという場面は相変わらず良く見られたので、もっと相手のパスコースを切れるような追い方を身に着けるかハイプレスは諦めるかしないとまずいだろうなとは感じました。まあこれは継続的な課題ですね。

狙うべきところは明らか

一方広島のボール保持については狙いどころが共有されていたと感じていまして、それは先制点のシーンにも表れていました。

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先制点のシーンは右サイドで受けた茶島がカットインして柴崎→エゼキエウと渡ってミドル、という形でした。このシーンでは清水のSHであるドゥトラが戻り切れておらず、そのスペースを使われた形です。
このシーンだけでなく試合を通してドゥトラは戻りが遅く、そのスペースに柴崎や井林から効果的なパスが繰り返し通っていました。ここが空くことを分かって柴崎や井林、エゼキエウを起用したのであれば城福さんやるなあ、と感じますね。

ドゥトラは戻りこそ遅いものの前半に2度の決定機を迎えるなど攻撃のアクセントとして効いており、あの2つどっちか決められていれば収支もあっていたかなと感じます。この辺は難しいところですね。

また、この試合ではWBに茶島と東という、どちらかといえばパスを出して攻撃を組み立てるタイプの2人が起用されていましたが、両サイドともきちんと相手を見て配置を動かせるようなプレーを選択していたと感じます。シャドーやDHに動き回る選手が多いので、WBに組み立て型の選手を置くのは今の広島と合っているかもしれませんね。

雑感

試合そのものは4-1で広島が勝利しました。広島の勝利に納得がいかないような内容では全然ないですが、4-1になるほどか?とも思いました。広島の見せた新しい守備の形は可能性を感じる一方で構造的な弱点もきちんとあり、そこを突かれると脆そうな気もします。
これを次の川崎戦に引き継ぐかは分かりませんが、弱点を覆い隠せるようブラッシュアップして今後の有用なオプションとしてほしいですね。

一方の清水はこれで5連敗。ボールを運ぶのはかなりうまいと思うのですが、引いたときに脆さが出ている感じはしましたね。ボールの奪い方を磨いてボールを持つ時間を長くするか、引くときはしっかり引くようにするか……今後どのように進化していくのでしょうか。

それではまた次回。

#10 【2020J1第14節 コンサドーレ札幌×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。今節は札幌戦。7試合勝ちなしvs4試合勝ちなしという、厳しい状況どうしの戦いです。互いに浮上へのきっかけを掴みたい一戦、スタメンは以下の通りです。

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お互いに3-4-2-1の並びとなりました。広島は川辺青山のDHコンビに戻し、ハイネルを右WBで起用しました。一方の札幌は攻撃のキーマンであるチャナティップが不在。ジェイがワントップ、駒井と懐かしのアンデルソン・ロペスがシャドーに入りました。

前後分断のリスク

さて、前半は札幌がボール保持率62%を記録し、ゲームを支配していましたね。札幌はいわゆるミシャ式を取り入れていましたが、その方法はかつて広島が行っていたそれとはやや違うように映りました。

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札幌はDHの宮澤を左サイドの底に降ろし、キック精度の高い福森を左サイドに張らせていました。また、もう一人のDHである荒野も最終ライン近くまで降りていって、3+1のような形のビルドアップを行っていました。これに対して広島はペレイラヴィエイラの2人が前に残るような形になり、それに加えて札幌のDHに青山や川辺がついて行くことで対応を図っていました。

しかし札幌最終ラインに菅野と荒野を加えたビルドアップ隊のパスコースを消すことはできておらず、ジェイに縦パスを入れられる場面が目立ちました。ジェイに縦パスが入った場合は荒木が対応に出るのですが、その時に佐々木と野上はカバーを意識して札幌のシャドーに対して思い切って出ていくことができません。結果的にシャドーのロペスや駒井が広島のDHがいなくなった中盤でフリーになり、裏に抜けるWBにスルーパスを供給する場面が多くありました。

こうなってしまうと広島はピンチを作られるばかりでなく、ボールを奪えても位置が低く、前に残っているツインタワーとの距離が遠いため陣地回復をアバウトなロングボールに頼るしかなくなってしまいます。そうして出した苦し紛れのロングボールは制度を欠きやすく、札幌に回収されてしまうという負のスパイラルに陥っているように見えました。

撤退による圧縮

このままではダメだということで、広島は飲水タイムを過ぎたあたりからDHを前に出してのプレスをやめ、さらにドウグラスヴィエイラも下げて5-4-1で撤退するようになります。

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ビルドアップ隊へのプレスを放棄することでDHを戻せるようになり、ジェイにボールが入ってもシャドーをCBとDHで囲んでボールを奪えるようになります。この形になってからはシャドーに直接パスが入ることもありましたが、その際はきちんと野上、佐々木が出ていって潰すという5バックらしい守り方ができていたように思います。

後ろに重い形なのでカウンターは繰り出しづらいですが、カウンターができていなかったのは元からなので変化なし。ピンチを作られていた形から脱してゲームを少しずつ落ち着かせることができました。

前後分断はお互いさま

さて、後半の立ち上がりには広島がボールを保持する姿勢を見せるのですが、この際札幌にも前半での広島と同じようなことが起きていました。

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広島のDHがボールを持つと荒野、宮澤の両DHが奪いに出てくるため、サイドのCBやWBからシャドーにボールを入れることができます。特に右サイドでこの傾向があり、これはWBにサイドの高い位置でボールを持てる茶島が入ったのも大きかったのではないでしょうか。広島の先制点も茶島からヴィエイラへのパスが起点となっていました。

正直広島が効果的に攻撃できていたのは後半の立ち上がりの10分くらいだけだったのですが、そこで先制できたのは大きかったと思います。

札幌としては前半自分たちが利用していた弱点を逆に突かれた形となりました。攻勢に転じようにも広島はしっかり引いてウィークポイントを消している状況。4枚替えでフレッシュな選手を入れて打開を図りますが、攻撃の構造そのものに大きな変化はなく、広島のブロックを破ることはできませんでした。逆にカウンターから追加点を奪った広島が2-0で勝利。久しぶりの勝ち点3を手にしました。

試合を終えて

広島は前半うまくいかなかったものの、いったん引いて立て直し、後半の開始とともに攻め込んで先制点を奪うという試合運びは見事でした。ただ守備の危うさは相変わらずで、前半に失点していれば全く違う試合となっていたことでしょう。まだまだ油断は禁物です。

一方の札幌はこれで8試合勝ちなし。決定機の数では広島を上回っていたように思いますが、前節のPKといい決まらないときはとことん決まらないものですね。ポテンシャルの高い選手が多いだけに勢いに乗れば強いはず。今の悪い流れをどう打開するかがカギではないでしょうか。

それではまた次回。

#09 【2020J1第13節 サンフレッチェ広島×ベガルタ仙台】

はしがき

平素より大変お世話になっております。ここ3試合勝利のない広島、今節はベガルタ仙台をホームに迎えます。勝ち点14と勝ち点10ということで互いに上位進出のきっかけを掴みたい試合、スタメンは以下の通りです。

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広島は今節もハイネルがDHに起用されており、川辺と森島がスタメンに復帰。ターンオーバーの香りもしますが、3バックは出づっぱりです。一方の仙台は4-2-3-1。柳、真瀬、浜崎らニューフェイスが並ぶ中、広島のことをよく知る吉野恭平もスタメンに名を連ねています。

ミスマッチを使える仙台

さて、前半は仙台がボールを持って試合を進めます。これが4分に生まれたペレイラのゴラッソの影響かというと、微妙なところだと思います。

広島は相手が4バックの場合、相手のSBにボールが出たタイミングでシャドーがプレスを開始、DHとWBが連動してパスコースを潰すことでボール奪取を狙います。

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図にするとこうなります。SBからCBへのバックパスはトップが潰し、SHをWBが、DHはDHが監視してコースを消します。トップ下やトップが受けに来てもCBが出ていって潰せるという形になっていますね。もちろんこれでも出ていったCBの裏にボールを通されるとかはあるんですが、それだけならばゴールから遠いし毎回うまくいくわけでもありません。

しかしこの試合ではプレスがこのようにはまっていない場面が多くありまして、それは仙台の立ち位置が理由です。

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仙台は浜崎椎橋の2DHのうち片方が下がり、両SBが高い位置を取ります。SBが高い位置まで出てくることで、シャドーとWBのどちらで対応するかがボケやすくなります。

それだけならいいのですが、この試合では広島のDHであるハイネルが下がっていく仙台のDHに勢いよくついて行く場面が多く、中央に大きなスペースができていました。こうなってしまうとヴィエイラが蜂須賀について下がると中央に直接パスを通され、かといってCBの平岡に寄せていっても蜂須賀を経由して中央に入れられます。そこで蜂須賀に対して茶島が出ていくと今度はその後ろにSHの石原が出てきて中央の関口も空いてる、ということになります。

ちなみに右サイドでは森島が柳について下がっていき、川辺も中央を空けてはなかったのでここまで崩されてはいなかったように思います。

とまあ色々喋りましたが、仙台は広島の選手たちの間に立つことを意識しており、人意識が強い広島の守備を空転させることに成功していました。実際には蜂須賀にボールが出てそこから左サイドでつないで中央を使われるパターンが多かったように思います。もしハイネルが中央を空けていなくてもこういう立ち方をされるとボールの奪いどころが定まらずにしんどかったと思いますが、ハイネルがスペースを空けてしまうことで左サイドの崩壊が決定的になっていたように思います。

この試合はもう終始ここを殴られ続けていたといっても過言ではなく、ハイネルが交替で下がる80分まで特に修正もされませんでした(浅野が入ってから5-3-2っぽくなったような気もしますが特に解決にはつながってなかったと思います)。

諸刃の剣、狂犬ハイネル

ここまで悪く言いっぱなしですが、ボールを持った時にはハイネルが輝きを放つ場面も見られました。

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例えば34分ごろの一連の攻撃ではハイネルが仙台ブロックの前を横切るようなドリブルで相手を引き付け、野上にフリーでボールを供給しています。何気ないプレーですが、この運ぶドリブルをできる選手が広島においてはなかなか貴重です。この他にも自陣で相手のプレスを引きはがして前進したりと、ハイネルのドリブルは広島のボール保持において確実にアクセントになっています。

ここ数試合、右サイドの茶島が縦へのドリブル突破、裏へのワンツー、カットインを使い分けて攻撃を活性化していますが、これに相手の陣形を動かせるハイネルのドリブルが合わさることでより難しい対応を迫れるはず。ボールを持たれると弱点となってしまうハイネルのDH起用ですが、ボールを持てば良いアクセントになるというのもマリノス戦からの2試合で分かってきたように思います。この試合ではボールを持たれる時間が長くてデメリットが目立ちましたが、ボールを持つ時間が増えれば相手にとって脅威となれる存在だとも思います。

気になる守備

最後に失点シーンの話なのですが、真瀬にクロスを上げられた際、広島は自陣PA内に4人しか戻っていません。

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3バックのうち2人がゴール前から離れているこの状況で、DHの川辺や5バックの一員であるはずの茶島、さらには交代で入った東や浅野までもがクロスを上げられるのを見つめるだけになってしまっています。

逆に、ボール非保持時の弱点だとあれだけ言ってたハイネルは戻ってゴール前を埋めています。(その前にサイドに出ていって中央に穴を空けてもいましたが……)広島は人に対する意識が強いというのは今シーズンずっと言われていることではありますが、人意識が強すぎるあまりに誰かが空けたスペースをカバーするという意識が失われているのではないかと思え、最近の失点の多さもうなずけるシーンでした。

試合を終えて

結局試合は1-1のドロー。お互いに決定機があり、両チームとも勝てた試合だったと思っているのではないでしょうか。

広島としてはきちんと研究されて殴られる場面が多くあったので、どうやってボールを持つのか、どうやって守るのか規則をきちんと定め直す必要があると思えます。ハイネルのDHは賛否あるでしょうが、デメリットをなくすような指導をする、あるいはデメリットを覆い隠せるような構造を作れば輝きを放てるとも感じます。扱いの難しいロマン砲ですが、ばっちりハマっている姿を見られることを期待します。

逆に仙台は思っていた以上にきっちり相手の嫌がる立ち位置をとってくるという印象。渡辺監督が退任して堅守速攻型に戻ったのかと勝手に思っていましたが、きちんと積み上げたものを受け継いでいる良いチームだと感じました。今はやや苦戦していますが、再戦時にどこまで調子を上げているかが楽しみですね。

それではまた次回。

#08 【2020J1第12節 横浜FM×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。今回は横浜FM戦です。前節かろうじて引き分けに持ち込んだ広島と、清水との打ち合いを制したマリノス。互いに過密日程の中でのゲーム、スタメンは以下の通りです。

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マリノスは4-2-3-1。この夏加入した前田がスタメンに起用されていますね。一方の広島はDHにハイネルを起用してきました。これまでにもたびたび中盤で起用されてきましたがまさかスタートからやるとは……という起用です。

納得の狙いと根性論

さて、試合は開始直後からお互いに最終ラインまでプレスをかけに行くハイテンションな展開になりました。その中で目についたのは広島が狙うスペースです。

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広島はCBもしくはDHを経由してWBにボールを届け、SBを引き出してその裏にシャドーを走らせる攻撃を狙いとしていました。シャドーが受けてWBが出ていくパターンもありましたが狙いは同じで、SBの裏を取ってあとはCB引き出してシンプルにクロスを上げます。

中央ではなくSB裏のスペースを狙うのは、中央には高速で対人の強いチアゴとプレーエリアの広い朴がいてボールを回収されてしまうからですね。サイドから攻略すればこの2人から逃れることができますし、左サイドから裏を取れればチアゴをゴール前から動かすことも可能になります。

また、ハイネルをDHに起用したのもうまく効いていて、マリノスの前線が高い位置からプレスをかけに来たところでハイネルにボールを付けられれば、彼はドリブルで剥がして展開できるだけの能力を持っています。元々ハイネルはボールを持つ時間が長い傾向があり、囲まれてボールを失うリスクもある反面相手を剥がして前進できることもありました。この試合はマリノスの前線がプレスをかけて中盤にスペースがある状態でボールを持てることもしばしばあり、ハイネルのドリブルによる打開が効きやすかったと思います。ただし序盤は、ですが。

広島は前半に左サイドからの崩しで浅野に2回、ペレイラに1回決定機が来ましたが、勝てるとしたらこのどれかで仕留めておくしかなかったように思います。この攻撃方法ははDHとシャドーの頑張りによって支えられており、彼らが消耗するごとにこの形で崩すことは難しくなります。事実、彼らの消耗は時間が経つにつれてじわじわと広島を苦しめることになりました。

捕まらないSB

さて、一方のマリノスのビルドアップ、カギを握っていたのは右SBの小池でした。

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4バックでビルドアップしてくるチームが相手の広島はボールがSBに入った時にシャドーが出ていってパスコースを潰して奪うことを狙いますが、この試合では小池がサイドに開いているとチアゴが持ち上がってくる場面がたびたびありました。これをペレイラが制限しろといっても多分GKを使ってかわされてしまうでしょうし、ストライカーにそこまで要求するのも酷でしょう。チアゴが持ち上がってそのまま中盤を使われると中盤の数的優位を使えます、ということでヴィエイラがチアゴについていくと、

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降りてきた仲川を経由して小池に侵入されたりするわけですね。このあたりの判断が絶妙で、広島の左サイドはかなり好き勝手前進されていました。特に小池は中央に侵入した後もそのまま中央から左サイドの方にまで進出していくこともあり、非常に厄介な存在だったと思います。

さすがにこれはあかんとなった広島、飲水タイム明けの25分ごろからは柏を前に出す形で小池に対応させ、仲川は佐々木が見るようにして左サイドにボールがあるときは4-4-2のような形で対応することが増えます。

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実際にこれでマークははっきりしますし、ボールが奪えれば柏をそのまま前に出して素早くカウンターに移れます。あのまま殴られ続けるよりは決して悪くない、納得できる変更だったと思いますが、皮肉にも失点シーンは柏が出ていった裏のスペースが起点になってしまいました。

柏がいない分ヴィエイラが戻って4-4ブロックにはなっていましたが、ハイネルが出ていったところで扇原に間を通されてそのまま崩された形。まあ人数はいたし慌てて出ていかずにサイドに誘導すれば良かったかもしれませんが、DHとして初先発の選手を責めるのは酷というものでしょう。

マリノスの選手たちはきちんと4-4ブロックの間に陣取っているので一度間を通されるとあのようにきれいに崩されてしまう、ということがわかるゴールだったと思います。

脆くなった右サイド

さて、後半の頭から広島は野上に替えて松本、浅野に替えて森島を投入。森島を左シャドーに入れて、ヴィエイラを右に回します。しかし前半から攻撃ではSBの裏に精力的に走り、守備ではチアゴと小池に翻弄されたヴィエイラはさすがに疲労が蓄積。さらに本来のポジションではないハイネル、松本がいる右サイドはマリノス攻撃陣に蹂躙されることになります。

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この辺静的な図にするのは難しいんですが、ヴィエイラは前に出ていこうとして戻ってこれないことが増え、ハイネルは持ち場を離れることが多く、松本は自分が出ていくべきかをうかがいながらのプレーとなってライン間に大きなスペースが空いていました。最もこれは彼らだけの問題ではなく、チーム全体として前に行きたいのか下がって守りたいのかバラバラになっているという面もあったと思います。

一度はセットプレーから追いついた広島ですが、後半はマリノスに押し込まれ続け、当然と言えば当然の結果として2失点。1-3でゲームを終えることとなりました。

試合を終えて

広島としては前半から飛ばして先に点取って逃げ切り!というプランを描いていたと思いますし、そのために目を付けたスペースも妥当だったと思います。それだけに、前半に点を取れず、後半に負債が残るだけとなったのは厳しかった。後半はいつものやり方に戻すことを画策しましたが、シャドーを両方替えちゃって前半と同じことを繰り返す!くらい思い切っても良かったかもしれませんね。

まあしかし、それをやっても分の悪い勝負にはなったでしょう。やはりボール保持について積み上げてきたものが違います。いつもやっていることが問題なくできるマリノスと、やっていることを放棄して急襲せざるを得なかった広島。安定した戦いができるのがどちらかは言うまでもないでしょう。普段からビルドアップやポジショニングの細かいところにこだわっているか、その積み重ねが勝負を分けた試合だったと思います。

それではまた次回。

#07 【2020J1第10節 浦和レッズ×サンフレッチェ広島】

はしがき

毎度お世話になっております。湘南戦は飛ばしてしまいまして、浦和戦のことを書きます。広島は鳥栖戦がまたも中止になってしまったのでやや日程に余裕がある状況、対する浦和は前の試合で6失点と厳しい負け方をし、悪い流れを払拭したい一戦となりました。スタメンは以下。

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浦和は4-4-2の形をとってきました。開幕前から注目され、始まってみればここまで6ゴールと前評判通りの活躍を見せるレオナルドが攻撃の軸になるでしょうか。今の浦和がどういうやり方を志向しているのかは知らないので、オーソドックスな4-4-2で何をしてくるかは見てみないと分かりません。

一方の広島はメンバーを湘南戦から変えず。勝っているチームは変えない、セオリー通りかつ城福監督らしい選択ではないでしょうか。

明確になった図式

さて、試合は開始早々の3分に浦和が汰木の抜け出しで得たPKをレオナルドが決めて先制。このシーンに関してはジャッジリプレイで議論もされていましたが、それ以前にハイネルの対応がまずかったという印象です。中央へのパスコースをを切りながら外に誘導するのがセオリーだと思いますが……いきなり手痛いミスが出てしまいました。その前にセカンドボールを奪いに行った川辺と青山がかわされて空いたところを使われた、というシーンでもありますが、敵陣での即時奪回を目指すなら背負わなければならないリスクでもあるので、まあ致し方なしかなと思います。

さて、前半5分で浦和が先制したことで、広島がボールを持ち、浦和が自陣に引いて構えるという構図が明白になります。この試合の浦和はもともと広島に持たせてカウンターを狙うプランだったのでしょうが、先制すると自陣でしっかりとブロックを組むことをかなり優先してきました。特に対応がきっちり決まっていると感じたのは広島の左サイドに対してです。

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左WBの柏がボールを持った際、SHの関根が下がってきて対応し、SBの橋岡はサイドまで出ていかないことが徹底されていました。これによって森島が裏に抜けていく動きをしても橋岡が見ることができます。関根はこのタスクを相当頑張ってこなしており、攻撃に出てくるシーンは前半の40分くらいまでほぼなかったと思います。

で、浦和は森島が裏に抜けていわゆる「ポケット」で受ける動きを相当ケアしており、もしSBの橋岡が出ることになった場合であっても

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DHの柴戸がついて行って自由にプレーさせません。ただしこの場合は柴戸が元いた場所が空くので、そこに青山や川辺が入ってきて崩しに行ったり逆サイドへ展開するシーンは何度かありました。

浦和がしっかり対策を練ってきているとはいえこれだけの対応を続けていれば必ず疲れが出てくるものですし、左サイドはこれをしつこく続けていれば去年のA東京戦のようにチャンスが来るのではないかと思って見ていました。

ハイネルの位置が低すぎる問題

一方の右サイドについて、チャンスができていないわけではなかったのですがずっと気になっている問題がこの試合でも起きていました。ハイネルの位置が低すぎるのです。

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ハイネルはDHと同じくらいの高さまで下がってボールを受ける傾向が強く、浦和はSHの汰木が前に出ていく形で容易に対応することができていました。右サイドではシャドーの浅野がサイドに流れていく動きも多く見られたので、それでSBを引き付けてCBSB間に川辺を走らせたいという狙いのような気はするのですが、だとしてもその移動をしている間にパスコースがなくなってしまうように感じます。実際に試合でも降りていったハイネルから効果的なボールが入ることは少なかったように思います。

25分ごろに青山からのパスで右サイドの奥まで侵入したハイネルがクロスを上げるシーンがあったのですが、この時のようにSHの汰木を後ろに下がりながらプレーさせるようなシーンがもっと見たかったなと思います。高い位置を取ってSBを引き出せば浅野や川辺が走りこむスペースができますし、SHの汰木はカウンターになるとドリブルでハイネルを抜き去って行くシーンもあったので尚更です。

一方で後半になって入ってきた茶島は積極的に高い位置を取るようになり、特に森島との組み合わせになってからは左サイドと同様に整理された攻撃ができていた印象があります。ハイネルはこの試合でも見せたように決定的なチャンスを作るプレーができる選手ですが、組織として右サイドが活きていたかというと首を縦には振れないかな、という感じですね。

紙一重だった采配

さて、浦和は前半の30分過ぎあたりから関根を下げた5-3-2のような形で守り、後半に入ってからは5-4-1で完全に撤退の構え。63分には得点の期待できるレオナルドを下げてキープ力のある杉本健勇、74分にサイドの汰木に替えてDFの岩波を投入するなど、この試合では一貫して点差を守るためのカードを切っていきました。

一方の城福監督もハイネルと浅野を下げて茶島と東を入れて右サイドに手を加えると、さらに柏に替えて藤井を投入、左が藤井と東、右が茶島と森島という組み合わせに変更します。ここが城福監督の考えが見えるようで面白かったですね。基本的には森島と柏を強いユニットとして考えているので柏がいる間は森島を左に置いていますが、柏がいないなら裏抜けしてクロスを上げやすいようにシャドーは効き足と同じサイドに配置するという意図なのかなと思います。

さらに青山とペレイラに替えて野津田とヴィエイラを投入しますがこの辺りから攻撃はトーンダウン。特に左サイドは藤井のドリブルに対し、左利きの東と野津田はサイドの方がプレーしやすいのか寄って行ってスペースを狭めてしまう場面も見られました。この辺の連携はまだ発展途上ということかもしれません。個人的には相手がこれだけ引いてるなら中盤かDFを削ってペレイラヴィエイラのツインタワー戦術も面白いと思いましたが、それはやりませんでしたね。

結果的には浦和が逃げ切りに成功して大槻監督の采配が当たった形になりましたが、広島も東と茶島の投入以降は攻撃がうまく回っており、もしそのタイミングで追いついていれば城福監督の采配が的中、レオナルドを引っ込めてしまった大槻監督は途方に暮れることとなったでしょう。紙一重のゲームだったと感じます。

試合を終えて

結局開始5分のゴールを守り切った浦和が勝利。守護神の西川を中心に何としても守り切るという気迫を感じる戦いでした。前節の反省を踏まえてまずは守備を優先するというのは分かっていてもやり切るのは簡単なことではありません。勝ち点3への執念を感じるゲームでした。

広島は敗れはしたものの多くのチャンスを作りだしました。しかし交替で入ってきた選手たちの連携や5バックの相手に対する攻め方などまだ発展途上と感じる部分もあります。とはいえすぐにFC東京戦、その後は横浜FM、仙台と難敵が続きます。去年からやってきた路線を継続し、さらなる成長が見られる好ゲームを期待したいですね。

それではまた次回。