【サンフレッチェ広島 2019シーズン反省会】

毎度お世話になっております。かんだ(@syukan13)です。

あけましておめでとうございます。せっかく今シーズン21試合もレビュー書いたんだから今シーズンの振り返りもやっておかねばなるまい、ということで 12月半ばになって書こうとして挫折していたこの振り返りですが、なんとか完成だけはさせようと思い、2020年になったのにこうして書いています。

 

 

今シーズン超ざっくりした振り返り

さて、今シーズンがどんな感じだったかを考えると、僕は3つの時期に分かれていたなと思いました。で、それを今シーズンの勝ち点グラフに当てはめてみたのでここに貼ります。

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図を作るのがへったくそですみません。もっとおしゃれにできれば良いのに。

それはともかく、2019シーズンは大きく分けて「堅守が武器の序盤」「自分たちのサッカーをやった中盤」「迷走した終盤」と分けられると思います。それぞれについてどういうきっかけでどういうサッカーをしていたのか、考えてみます。

なお、この勝ち点グラフを使った考察についてはちくわさん(@ckwisb)のノートでやってたのを見て良いなと思ったので勝手に真似しました。ごめんなさい。

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18シーズンの縮図となった序盤

さて、開幕戦のスタメンはこんな感じでした。

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2018シーズン最終戦を踏襲する3-4-2-1。また、林、青山らベテランの不在により大迫、川辺、松本泰志といった若手を積極的に起用した編成となりました。この試合を見る限りではボールを持って相手を押し込んでいくことができ、守備についてはほとんど崩される場面もなかったように思います。

しかし、次の磐田戦では満足にビルドアップができないままボールを握られてスコアレス。その後のセレッソ戦、大分戦もプレスからもぎ取った先制点を5-4-1ブロックで固めて守り切るという展開となり、試合の主導権を握れていたとは言い難かったと思います。再現性のある攻撃パターンも野津田が裏に走る頻度が高いというくらいで、まともにボールが前進できない試合も多かったと思います。

堅守を活かして第7節まで負けなしでしたが第8節東京戦からは5連敗。得点がまるで取れなくなった上に持ち前の堅守を活かせずに良いところのない試合が続き、2018年終盤を思わせる連敗地獄。浦和にこそ大勝したもののその次で札幌に完敗し、ここで城福監督は方針転換を決断します。

自分たちのサッカーと「ポケット」

まあいわゆる「自分たちのサッカー」への転換です。相手どうこうではなくて自分たちのやり方を貫いて勝つんじゃいという、ザックジャパン以降ちょっとどうなん?と言われている方向に舵を切っています。湘南戦の監督インタビューが象徴的ですが、

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「今回の相手対策はミニマムにした。我々の中で持っている情報の1割ぐらいしか選手に渡していない

 

というぐらい、相手のしてくることではなくて自分たちのやるべきことに目を向けに行っているようでした。

それでその自分たちのやるべきことというのが、「ポケット」を狙いに行くことでした。ポケットとは「敵陣奥深くで、ペナルティエリアとゴールエリアの間のスペース」くらいの意味だと思われます。いつかのインタビューでそう呼ばれていた記憶があるのですが、まあハーフスペースの一番奥と言っても良いかと思います。ここを起点にして相手の守備陣を攻略することに軸を置いたサッカーをしていたのがこの時期でした。

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図で言うと赤いエリアがポケットと呼ばれていると思われます。ここにシャドーを走らせてWBからパスを出します。すると相手DFは1人付いてくるしかなく、それによって空いたスペースに飛び込んできた広島のDHがフリーで合わせる、という形を狙っていました。

何でここを狙うことにしたのかはっきりとした根拠は分かりませんが、確かに3-4-2-1という並びにおいてはシャドーがこのスペースに走りこむという動きがやりやすく、相性は良かったと思います。実際にこのスペースへの裏抜けから生まれた得点が多くありますよね。

www.youtube.com

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例えばこのあたりです。柏のゴールはパスを出したWBがそのまま中央に突っ込んでくる変化型ですが、シャドーの裏抜けが起点という点では同じです。

この戦術のもとで躍動したのが森島でした。浦和戦で先発するといきなり全得点に絡み、そのままシャドーでレギュラーに定着、24試合で3得点を記録。WBがボールを持つ度にハーフスペースを縦に走るというタスクをきっちりこなすばかりか、そのスピードで強引に相手を剥がして突破もできておまけにセットプレーも蹴れるという高性能アタッカーに成長。広島の攻撃にとって欠かせないピースとなりました。これであと4~5点とってくれれば言うことないんですが、そうなるとJリーグでプレーしている場合ではなくなってしまいますね。

さらにWBに突破力があり相手が警戒せざるを得ない柏、DHに機動力がありクロスに飛び込んでいける稲垣を起用。この3人のユニットによる攻撃を中心に湘南戦からは調子を上げ6勝5分の11戦負けなしを記録。一時は優勝争いに絡むかというところまでいきました。

 

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この時期のスタメン



結果を求めたがゆえの迷走

しかし、シーズン終盤の大事な5試合で1勝2分2敗と失速。このあたりでは中盤の好調の原動力となった左サイドユニットを早めに解体し、レアンドロペレイラやハイネルといった決定力のある選手を中央に集めてゴリ押しする采配が目立ちました。リーグ戦中盤にも途中から4-4-2に変更してパワープレーをしてみたり、カップ戦やACLでもハイネルのシャドーやワントップをやっていた気はします。ただほとんどのケースで崩しがうまくいかなくなって迷走していた印象があります。まともに機能したのはアウェイのガンバ戦くらいではないでしょうか。それですらシステム変更してから失点しとるし。

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スクランブル4-4-2

特に印象的だったのはアウェイ川崎戦で、前半先に失点こそしたものの左サイドの崩しはそれなりに相手を苦しめ、鬼木監督も手を焼いている印象がありました。ところが後半の頭からうまくいっていた左サイドを解体して3-1-4-2にし、ハイプレスとパワープレーが軸の殴り合いに移行していきます。相手のミスから追いついたものの直後に失点。ある程度通用していた左サイドというこれまで培ってきた武器を捨てて結果も出ないという、リーグ戦終盤の迷走具合を象徴する試合でした。

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川崎戦後半の3-1-4-2



優勝するためにこの試合は勝つしかなく、そのためには得点が必要で、得点を取るためには異物感のある選手が必要というのは分かります。しかし、そこで積み上げてきたものにあっさりと背を向けてしまうのは、これまでやってきたことが無駄だったように感じられて個人的には残念でした。

 

そもそもの目標と今シーズンの反省

さて、ここまで書いて気になったのは「そもそも今シーズンの目標は何だったのか?」ということです。

僕は「ボール保持の局面を重視するアグレッシブなサッカー」くらいに捉えていたのですが、どうも城福監督のインタビューなどを読んでいると違うように思えてきました。シーズン終了後に行われた城福監督の総括会見から引用しますが、

 

そうはいっても実際に開幕すると、負けるわけにはいかなくなる。負けからスタートすると、チーム作りではないストレスや、いろんなものがかかってきます。そういった意味では、3バックの中で、いかに去年から積み上げた守備をしっかりと継続していくかに多少、重きを置いた自分がいます」

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とあり、まずは守備を重視して負けないことを優先する、という方針だったものと思われます。シーズン開幕前の城福監督のインタビュー(TSSサンフレッチェ広島に掲載)にも「まずは守備を取り戻したい」という発言があった一方、攻撃についてはセットプレーを強調しており、ボール保持攻撃をどうしていくかについては明言されていませんでした。

これらのことから、2019シーズンは「まずは堅い守備を構築して負けないチームを作ってシーズン序盤を乗り切り、そこから攻撃に着手していく」というような方針だったものと思われます。この方針そのものは2018シーズンとそんなに変わっていないですよね。2018シーズンは堅守がうまくいきすぎてそのまま行って後から手詰まりになった、というようなイメージがあります。

この方針が良いか悪いかではなく、城福監督がこういうタイプの監督であるという話なのかなと思います。チーム作りをする上では選手のモチベーションやチーム内の雰囲気もありますので、そこが崩れないように序盤は負けないことを重視する、というのは理に適った思想であると思います。哲学に殉じてコンビネーション熟成のためにシーズン序盤はある程度負けてもOK、というやり方も好きですけどね僕は。

そういった意味では、シーズン序盤の方針転換はある意味予定通りだったといえるかもしれません。序盤で守備から入って勝ち点と自信をチームにもたらし、そこから攻撃に着手していくというのは実際に行われていましたね。5連敗があったのは誤算だったかもしれませんが。2018シーズンは攻撃に着手できずズルズルいってしまった印象があるので、そこは成長したところだったと思います。

ただシーズン終盤に迷走したのはやっぱり残念ですね……あそこで中盤までのような攻撃を我慢強く続けられていればラスト5試合がもっと良い内容の試合になったと思いますし、結果だってついてきたかもしれません。

来シーズンに向けて

とりあえずは今シーズン中盤のようなサッカーをやってほしい!ということに尽きます。チームが連動してハーフスペースを攻略していくやり方は分かっていても止めるのが難しく、実に多くのチームに効いていたと思います。もちろんそのままではダメなので、裏抜けしたシャドーがそのまま高速クロスを上げるとか、よりバリエーション豊かにして行かなければならないでしょうが。

で、そのためにもうちょっと立ち位置の整備をしてほしい。今シーズンもポケットを使って攻略するという目的はあったものの、そのためにWBが高い位置取るとか、CBがドリブルで剥がして持ち上がるとかディテールは詰められていませんでした。ボール保持以外でも、カウンター対応は3バックの対人能力に任せきりだったり、自陣に引いたのに守備ブロックに急に大穴が空いたりと、ポジショニングを意識して欲しい場面が多数ありました。そのあたりがどう解決されるかを見ていきたいですね。

ただ城福監督は「アドリブが重要」という発言をしているなど、あんまり細かいこと決めたがらない監督という印象があるのでもしかしたらそのままかもしれませんが……

まあその辺はまた来シーズン見ていきたいと思います。

おわりに

ということで5000文字近い文章になってしまいました。ここまでお読みいただいた方がいましたら、お付き合いありがとうございました。

今シーズンから始めたレビューブログでしたが、やっていくうちに少しは選手、監督のやりたいことに迫れていたような気がします。ぼんやり見ているだけでは何が起きているか分からないサッカーというスポーツですが、そこには勝つための何らかの意図が隠されており、それを読み解くことでお互いの駆け引きを楽しむことができると思っています。これを読んでいる広島サポの方もそうでない方も(そんな方がいればですが)、少しでも戦術の面白さに気付いてもらえるといいな、と思います。

今シーズンはリーグ戦21試合しかできませんでしたが、来シーズンはリーグ戦全試合を目標にしていきたいと思います!

それではまた、2月末にお会いできますように。

 

#21 【J1第34節 サンフレッチェ広島×ベガルタ仙台】

はしがき

毎度お世話になっております。最終節、仙台戦です。広島はすでに順位が6位で確定、仙台も残留を決めて11位とお互いに消化試合といった趣です。結果のもたらすものが少ないゲームですが、最終節なので来年への希望が見えるゲームにしたいところ。スタメンは以下の通りです。

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広島はシャドーに東を起用して川辺がDH、青山がベンチスタートになりました。仙台は4-4-2。前回対戦時も4-4-2だったと記憶していますが、ずいぶんメンバーが違います。いろいろ編成上の苦悩があったのかもしれません。前回対戦といえば今シーズン一ショッキングな負け方だったので今回はそうならないよう願いたいところです。

ボールは進めど

さて、試合が始まってみると立ち上がりから両チームともに相手の最終ラインにプレッシャーをかけてボールを奪いに行く様子が見られました。

広島の3バックでのビルドアップに対し、仙台は2トップ+SHでのプレッシングを敢行。どちらかといえば2トップは野上、荒木を監視して佐々木にパスが出るところで田中が出ていくことが多かったように思います。仙台が攻撃を左サイドに誘導していた、というよりは広島のビルドアップは割と左偏重だからそのサイドに(少なくとも梁よりは)機動力のある田中を配置したという方が近いかな、と思います。

ただ、このプレスに対しては広島はどう回避するかの方針はあったように思います。

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柏に渡った時にSBの大岩が出てくるので、その裏にシャドーの森島を走らせてそこに渡すやり方です。森島が下がって稲垣が出ていくこともありましたね。大岩が柏のパスコースを切りに行ってるのですが、柏がダイレクトで出すことが多かったのでそれでつなげている感じでした。森島が走ることによってDHの富田を動かして稲垣へのパスコースも作るという狙いもあると思うんですが、この試合では富田は本来のポジションからあまり動かなかったので裏抜けする森島が結構放置されていた感がありました。

これについては仙台がわざと放置していた説もあります。結局プレスを突破されても陣形を崩さなければそのまま中央に人を戻してブロック作ってしまえば跳ね返せるので良いや、と考えていたのでは?と感じました。実際広島は前半かなりボールを支配していましたが決定機は全然作りだせていなかったですし。

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仙台側はDHを動かされて中央に穴が空くよりは大外~ハーフスペースを捨てても中央にスペース作らないことを優先したのかなという感じです。広島がエリア内に送り込んでくるのは多くても3人くらいでしたし、仙台には対人最強のシマオマテもいるので、単純にクロス上げられたくらいでは崩されないという計算だったのかなと思います。

ただまあ仙台は2トップの片方も自陣深くまで戻ってくることが多く、その際には長沢か石原の片方しか残っていませんでした。前残りが1人では中々カウンターに出て行けず、広島が押し込み続ける展開になったのだと思います。

守備の基準はやっぱり大事

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一方、仙台がボールを持った際にはSBに入ったところでシャドーが寄せていき、DHがDHを監視、SHにWBが出ていってパスコースを遮断していました。仙台がボールを持つ場面はあまりなかったですが広島はこうしてビルドアップを阻害してボール回収に成功していました。で、20分過ぎくらいから椎橋が時々DFラインに降りてくるようになります。

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この時、CB脇に降りた椎橋に対して東が寄せて、位置を上げたSB永戸に対してハイネルが寄せるべきか迷っているのが印象的でした。23分頃のシーンですね。本来3バックになったことで3-4-3どうしに近い形となり、マークははっきりすると思うのですが。

想定していた4-4-2においてハイネルが捕まえるべきは梁なのにその梁が内側にいて永戸が外の高い位置で受けているので、聞いてたのと違うぞ、と思っていたのかもしれません。3バックにしたことで全体的な配置は噛み合っているはずなのに守備の基準点が狂わされている、というのが面白いなと思いました。それは広島が仙台の4-4-2ビルドアップに対して準備をしてきたからこそ起こることだとも言えるのですが。

ひらめきも必要

後半になっても起こっていることは前半とそう変わっていなかったように思います。ただ仙台はかなり引いているので広島が攻撃に人数かけても大丈夫じゃん、と思ったのかDHやCBが裏に抜けていく動きが増えたりしてはいました。特に稲垣が下がってからも川辺がSBの裏を取る動きを継続していたのは良かったと思います。また、ワンツーやフリックといったコンビネーションが増えていたのも良かったですね。何でもかんでもアイデア、ひらめきに頼っていては疲れてしまいますが、アタッキングサードで強固なブロックを崩すにはそういう要素も必要になってくるなと感じました。そういったバリエーションの増加が結果として70分以降の決定機の多さにつながったものと思います。

試合を終えて

なんか後半は特に書くことがない感じになってしまいました。試合を通して広島がボール持って押し込める状態でしたが、最後どうやって点を取るかはまだ改善の余地ありでしょうか。でもレアンドロペレイラを入れたからといって放り込み一辺倒にならずコンビネーションを使えたのは良かったですね。空中戦が得意なアタッカーはあまりいないですし、その方が良いと思います。

また、青山をベンチスタートにして機動力のある選手で中盤を固めましたが、これもトランジションで上回りスペースへのランニングも増えていて良かったと思います。特に川辺はDHに置いて、後半のように後ろから裏に抜けていくような動きをしたほうが生きるんじゃないかなと思いました。来シーズンの編成がどうなるかわかりませんが、サイド攻撃をやるにしてもただクロスを上げるだけでなく、今シーズンやってきたサイドからの崩しを磨き上げて欲しいなと思います。

それではまた来シーズンお会いできますように。

#20 【J1第33節 湘南ベルマーレ×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。湘南戦です。片や残留のため何としても勝ち点3の欲しい湘南、一方の広島は4位になればACL出場権が取れるかどうか、というゲーム。湘南は今年のリーグ戦という意味でもJ1での広島戦という意味でもずいぶん長いこと勝利がありませんが、この試合はどうなったか。振り返ります。スタメンは以下の通りです。

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お互いに3-4-2-1のミラーマッチとなりました。湘南は前回対戦からGKが富居になったとか山田と指宿っていたっけとかいくつか変更はありますが、並びそのものは変わっていないようですね。広島の方もドウグラスヴィエイラをシャドーで起用する説が出ていましたが結局はいつも通り、ワントップは引き続きレアンドロペレイラが起用されています。

意味が異なるロングボール

さて、試合の序盤はロングボールが飛び交う展開となっていました。お互いのチームがリスクを避けた結果序盤戦がロングボールの応酬になるというのはよくある展開ですが、この試合の湘南についてはそうではなかったと思います。

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湘南はターゲットマンとして最前線に配置された指宿へのロングボールを明確にボール前進の手段としていました。そして、彼が競り合ったこぼれ球を拾うための配置をしていました。シャドーとDHの4人を中心に指宿の周りで数的優位を作り、こぼれ球を回収。ボールを奪えればパス交換で広島のCBやWBを引き出し、その裏を狙うという形で攻撃していました。

また、ボールを奪えなかったとしても、広島のビルドアップを阻害するための仕組みも湘南は持っていました。

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湘南は1トップ2シャドーが広島のビルドアップ隊に激しく圧力をかけて時間を奪い、サイドへ誘導。青山や稲垣はDHが監視し、WBに対してはWBが出ていくことでパスコースを遮断していました。

広島の主要な前進ルートはWBにボールを渡してからシャドー、DHの動きで相手のポジションを動かしてのハーフスペース攻略である、と僕は解釈しています。しかし、この試合ではそもそもWBにボールを渡しても時間とスペースが奪われていたためその後の展開ができず、最終ラインに戻すしかなくなっていました。結果として前進ルートがなくなり、CBが長いボールを蹴るしかなくなっていたと思われます。


ただハイプレスをかけた結果中央にはスペースができており、シャドーに縦パスが入ったりペレイラが長いボールをキープできたりと中央から前進できる機会はありました。ですがこの機会は全く生かせていなかったように思います。川辺や青山が前を向いてボールを受けても前線の選手が裏に抜けるなどのアクションがなく、出しどころに迷っている間に湘南の帰陣が完了する、という場面は何度か見られましたね。これがチームとしての設計の問題だったのかなと思います。せっかくWBに預けることなく中央から前進できても、そういう事態を想定していないので出し手もどこを見ればいいのか分からないし、受け手もどこに立てば良いのか分からなかったのではないかと思います。

こうした形で広島はボール前進できず、湘南の攻撃を受け続ける展開でした。セットプレーの流れから早い時間に失点したこともあり、広島はいつものペースを見失ったまま時間が進んでいきます。

動き出す森島

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悪い流れの前半でしたが、途中からは広島がボールを持てるようになっていきます。湘南のプレスが落ち着いたこともありますが、それとは別に森島のポジションチェンジが要因だったかなと思いました。

この試合はミラーマッチでマッチアップがはっきりしているので、シャドーがCBにきっちり監視されていてボールを受けられない場面がありました。まあ毎回そういうわけではなかったのでシャドーがパスを受けられる局面もあったわけですが。しかし単に列を降りる(上下にポジションを移す)だけではCBがついてきて潰される可能性が高い噛み合わせです。

そこで、前半の途中から森島がWBとCBの間のスペースに斜めに降りてくるようになりました。ハーフスペースから大外へとレーンの移動(横の移動)を交えることで、CBがついていきにくい位置取りをしていました。ここで落ち着いてボールを受けられるため、WBにボールを渡すいつもの形と似たような状況を作ることを狙ったのかなと感じました。 

ただ、広島は最終ラインで数的優位を確保するために稲垣を落としていたこともあり、サイドでボールを持った後の崩しにもバリエーションがないという状態で、大きなチャンスは青山が守備ブロックを突破した44分のシーンくらいだったでしょうか。

役割の整理と今の限界

前半まるで良いところのなかった広島は後半の頭から稲垣に替えてドウグラスヴィエイラを投入。川辺をDHに下げます。

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ドウグラスヴィエイラをシャドーに投入し、高い位置を取らせました。彼にロングボールを出せば競り勝ってボールをキープされる確率が高いため、DHも警戒せざるを得ません。そうすることで青山にボールを渡したりハイネルがドリブルで侵入するスペースを得ることができ、割とうまく前進できていたと思います。

左サイドも森島のポジションチェンジもあり、また湘南は前からボールを奪いに来てスベースもあったことから、なんとかチャンスを作ることはできていたように思います。各ポジションが立つべき位置、やるべきことを整理できた結果、いつもと同じくらいの精度でボールを前に進めてチャンスを作り出すところまでは行けていたと思います。

ただ、それも湘南が前からプレスに来ている間だけでしたね。

湘南が1トップの野田を残して自陣に撤退し、5-4-1のブロックを築いてからは広島に堅守を崩す術がなく、ペレイラドウグラスのツインタワーによる放り込みしかなくなってしまいました。本来であればここで守備を崩すために重要な役割を果たすのが柏、森島、稲垣の左サイドトライアングルなのですが、稲垣はピッチから去り森島と柏はそれぞれ逆のサイドに配置されている状態でした。まあドウグラスを投入したのは良かったと思いますし結果論に過ぎないのですけれど、そんなことを言いたくなるくらい自陣に撤退されてからの広島には手立てがなかったように思いました。

試合を終えて

湘南にとっては勝ったばかりか内容もよく自動降格も回避できたということで、素晴らしい試合になりました。ロングボールを戦略的に利用したボール前進とビルドアップの阻害、あと書いていませんが切り替えの早さにも目を見張るものがありました。切り替えの早さというのも気持ちだの強さだけでなく、ボールを奪う場所、狙うべきスペース、奪われた後に戻るべき場所がきちんと定まっていてこそ実現できるものだと思います。チームとしてしっかり対策を考えて実装し、選手たちが正確に実行したからこその会心の勝利でしょう。

こんな風に潔くロングボールを使い、トランジションの局面で勝つ!というサッカーはJ1で採用しているチームがあまりいませんがとても面白いやり方だと思いますし、ぜひ次節も勝って残留し、このスタイルを磨き上げていってほしいなと感じました。

 

一方の広島にとっては、一言で言うと完敗だったと思います。スコアは0-1でしたが、優勢だと思えたのは後半の立ち上がりくらいだったでしょうか。特に前半の何もできなさはかなり厳しいものでした。湘南側は広島が普段やっていることを完璧に分析して封じにきていたと思います。

城福監督ほか、何人かの選手も前半の出来について「もっとひっくり返せればよかった」ということを言っていました。湘南のハイプレスに対し、前に出てくるんだからその裏のスペースをもっと使えれば良かったということだと思います。もちろんその通りなのですが、それを開始前の段階から想定して実行できるとより良かったですよね。湘南はたぶん3-4-2-1だということは分かっていたはずですし、スタイル的にはあれくらいプレッシャーかけてきてもおかしくないとは思います。そうでなくても、ビルドアップが阻害されたときのプランBは用意しておいて欲しかったところです。これまでは3バックが捕まえられてもWBやシャドーを降ろして来ればそこでボールを落ち着けられていましたが、この試合はそこにもついて来られたことでにっちもさっちも行かなくなってしまいました。

やはり相手あってのサッカーですから、相手のやり方を想定して対策を用意し、それが封じられた時の策も用意できていてスムーズに実行できる、そんなチームを見たいなと思います。次節は最終節ということで今シーズンの集大成、一週間では難しいでしょうが成長した姿を見られることに期待したいと思います。

それではまた、次回があれば。

#19 【J1第32節 サンフレッチェ広島×鹿島アントラーズ】

はしがき

平素より大変お世話になっております。今節は鹿島戦ですね。3週間ぶりの公式戦な上タイトル獲得のような分かりやすいモチベーションもないという難しいシチュエーションで上位チームとの対決となりましたが、どんなパフォーマンスを見せてくれたのでしょうか。スタメンは以下の通りです。

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鹿島はおなじみの4-4-2。前回の対戦では若いメンバーの目立つ編成でしたが、今回は僕でも知っている選手が多く起用されていますね。白崎やベンチにいる相馬など、いつ鹿島来たの!?という選手もいますが。そういった選手がすぐに馴染んでいるのも鹿島の凄いところかもしれませんね。

一方の広島もいつもの3-4-2-1。ただ、1トップにはドウグラスヴィエイラに替わりレアンドロペレイラが起用されました。高い得点能力を持った選手ですが、起用の意図は何でしょうか。

 

ボール前進できなくても別にいいかも?

さて、両チームの陣形は噛み合っていないので、お互いにそのままの形でビルドアップを試みる序盤戦となりました。

鹿島は4バックのままで、レオシルバが度々DFラインの近くまで落ちてくる形。広島は鹿島のSBにボールが入ったタイミングでシャドーが寄せていきますが、降りていくレオシルバには無理について行こうとはしていなかったため、比較的自由にボールを受けられていました。

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ただこれ以降の形は正直そんなにはっきりとはしておらず、レオシルバが何とかスペースを見つけて2トップや中に入ってきたSHにボールを渡して前進しようとしている、という印象でした。例えばSHが受けてDFラインから人を引き出し、その裏に走った土居にボールが出るみたいなことを狙ってくるかなと思ったんですが、敵陣奥深くに侵入できることは少なく、むしろパスコースがなくなって長いボール蹴ってミス、みたいな場面の方が目立っていた気がします。

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SBが高い位置でボールを持ってWBが対応に出てきた場合には、SHやFWが裏に走って空いたスペースを狙うというのはありましたが、これも回数は多くなかったですかね。総じて、ボール保持で相手を動かして崩そうという意図はそんなに感じられませんでした。

もしかすると鹿島はボール持って相手を崩すというのはできなくてもいいや、と考えているのかもしれません。別にセットされた守備を崩せなくても、プレスかけて奪ってカウンターすれば相手の守備整ってないし、それもダメならセットプレーあるし、みたいな。トランジションの局面でバランスが崩れないように、あえて配置をあまり動かさないようにしているのかもしれませんね。まあ事実としてはボール前進することはあまりできず、広島にボールを持たれる時間はだんだん増えていきました。

 

やっぱりポジショニングは大事

一方の広島も、4-4-2を相手に3-4-2-1からあえて配置をいじる必要もないのでそのままビルドアップをしていきます。

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広島のCBがボールを持った際、鹿島のSHは結構ボールを奪いに前に出てきます。そこでWBにボールを渡すとSBを引き出せるので、空いたスペースにシャドーを走らせることができます。CBは中央でペレイラがピンどめしているため動けず、DHは中央を空けてついて行くかサイドを捨ててその場に留まるか選ばなくてはなりません。こうしてDHに①CBSB間②中央のFWMF間 のどちらを捨てるか選ばせて、空いたスペースにボールを出します。①ならそのまま突破してクロス、②なら入ってきたDHに預けるなりWBがカットインするなりして中央突破、あるいは逆サイドへの展開を目指します。

この試合に限らず、僕は今期の広島の狙いはこういう前進だと解釈しています。①②いずれかのルートで前進して主にCBSB間をとってマイナスのクロス、走りこんだ稲垣が合わせるという攻撃は11戦負けなしの原動力でした。この試合でも鹿島は逆サイドのSHがカウンターに備えてやや前目にポジションを取ることが多かったこともあり、これが狙い通りできているシーンはあったと思います。30分ごろの攻撃なんかはまさにこの流れですね。

ただ……この試合ではそれがうまくいってないことが多かったんですよね。僕はこのエラーは複数のポジショニングに関わるミスによって引き起こされていたと考えています。

まず、内側にいるCBとそれによるWBの後退です。

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特に右サイドで多く見られた光景ですが、左右のCBがサイドに開いていないと鹿島のFWが1人で2人のCBを監視できるため、2トップに対する3バックの数的優位を活かすことができません。2トップで3CBを止められるならSHはWBを見ていれば良く、結果としてSBを動かせないので相手の守備に穴を空けられません。こうなってしまうとDHかシャドーに縦パスをつけるくらいしかありませんが、DHは相手のDHに見られていますしシャドーへのパスコースも広くありません。CBはサイドまで開いて2トップの脇を取る方が、最終ラインでの数的優位を有効に使えるはずです。

また、この状況では最終ラインのサイドにスペースがあるので、WBがボールをもらいに下がってきて4バックみたいになる現象も度々起きていました。WBが下がってきても鹿島はSHがついて行けばいいし、ならSHの裏を狙おうといってもSBがいるので難しいです。CBがドリブルで運ぶスペースもなくなってしまいますし、より時間とスペースがなくなってしまう動きかなと感じました。ボールと逆サイドのWBがカウンター対応のため低い位置にいるのは良いかもしれませんが、ボールサイドのWBはCBが運ぶスペースを確保するために高い位置を取ってほしいなと思います。

 

また、ボールがサイドにあるときのDHとシャドーの距離感も気になりました。

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うまくSHを引き付けてWBに渡した時にも、シャドーとDHの距離が近すぎて相手のDHに二択を迫ることができずどっちも潰されてしまうというシーンも見られました。これはシャドーの位置が低すぎる場合とDHが前に出る意識が強すぎる場合と両方あったので何とも言えないのですが、どうもチームとしてここでDHを動かすことは考えていなさそうな気がしてきました。二択を迫るとか難しいこと考えなくても、WBに相手のSBが食いついたらシャドーはその裏を取りに行く、くらい単純化してもいいと思うのですが……

こんな具合でなかなかうまく敵陣に侵入できず、支配率では上回りながらも大したチャンスのない前半になりました。

5バックの守り方を

 後半も両チームともそんなにやり方は変えていなかったのですが、お互いに前からのプレスが落ち着いていく様子は感じました。鹿島はSHが最終ラインまで出てこなくなり、広島はシャドーがSBまでプレスに行く回数が減ったかな?と思います。そうなると広島はますますSBやDHを動かせないので攻めにくくなる一方で、鹿島はSBが比較的安全に高い位置でボールを持てることが増えていました。結果として鹿島のSBがハイクロスを上げて、空中戦をしながらなんとかシュートにもっていこうとする場面が多く見られました。

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SBがカットインする形でファーサイドにクロスを上げる形が多く見られました。空中戦にあまり強くないWBのところを狙っていたのかもしれません。

また、広島が引いて守った時に中盤にスペースが空いてしまう点も気になりました。

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これは別に後半に限った話ではないし何ならこの試合にも限らない話なのですが、広島は引いて守った際にも人に強めについて行き(特に稲垣に顕著)、ギャップが生じることがあります。この試合で言うと33分にセルジーニョにシュート打たれたのはこのパターンですね。あとは神戸戦の田中順也にやられたのとかもこれですね。この時にできたスペースをどう埋めるかについて、シャドーが頑張って埋めてもいいですが、せっかく最終ラインに5人もいるのでCB一人を前に出してWBを絞らせて対応し、シャドーには前残りしてもらってカウンターに備える方が良いのではないかと感じています。

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WBはやや大変ですが、せっかくの5バックなので思い切って迎撃して5人もDFがいるという長所を活かせる守り方をしてほしいです。もともと広島は人への意識が強い守備をするので、こっちのほうが適性あるような気もしますし。

試合の話に戻りますが、広島の守備に気になる点はあったものの別に鹿島が積極的にそこを突きに行ったということもなく、ハイクロスによる攻撃を繰り返していました。しかしそれだけでゴールをこじ開けることはできず、広島もボール保持の時間が減ってチャンスを作れないまま。両チームの交替策も状況を劇的に変えるものではなく、フレッシュな選手を同じポジションに投入するくらいだったのであまり試合に変化をもたらさなかった印象です。終盤にオープンな展開になってきてようやく少し決定機ができましたが、全体として低調で決定機の少ないまま試合が終了したように見えました。

試合を終えて

なんだか両チームとも強みよりもできないことが目立った試合だったような気がします。広島はボールを保持した際のポジショニングに改善点が多く、撤退守備にもやや穴がある状態。鹿島はボールを持つと攻め手がなくなってハイクロスに頼り、カウンターかセットプレーでの得点を主に狙っているのかなという感じでした。

広島としては、シーズン序盤にできていた堅固なブロック守備も11戦負けなしの時にできていたサイド攻撃も失われてきているように感じました。もしかしたら当時からできてなかったけど結果は出ていたにすぎないのかもしれませんが。なぜ3-4-2-1を採用しているのか、この配置と選手の特徴を最大限に活かすにはどうすればいいかをチームとして共有してほしいと思います。

鹿島はボールを持つとオロオロしていたのが結構意外でしたね。ボール非保持の際にはきっちり4-4-2で構えて奪えそうと見るやすぐにスタートしてカウンター、みたいな姿勢は流石だなと思ったんですが、ボールを持たされた時に苦労しそうだなというのはかなり思いました。というかこの試合を見たらこの後の対戦相手はみんなボール持たせてきそうな気がします。その時にどうするかは気になりますね。

今年もあと2試合。優勝争い、残留争いも注目ですが、広島が今シーズンの仕上げにどのような試合を見せてくれるかもきちんと見ていきたいと思います。

#18 【J1第30節 川崎フロンターレ×サンフレッチェ広島】

はしがき

いつもお世話になっております。J1も残り4試合。ミッドウィークの浦和戦を引き分けたサンフレッチェ広島は、激闘のルヴァンカップを制した川崎のホームに乗り込みます。優勝争いに残るためにはどちらにとっても落とせない一戦、スタメンは以下の通りです。

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広島はハイネルが出場停止で不在、代わりはエミルが務めることになりました。一方の川崎は家長、車屋、谷口が出場停止、さらにケガで守田もいません。それでこの面子かよ!と思いますが。以前にも書きましたがこのチームは本当に選手層厚いですね。

ビルドアップの目的は

さて、僕はこの試合ボール持ってくる川崎に対して広島がどう対応するか見てみたいと思っていたのですが、実際に序盤は川崎がボールを保持する展開となっていました。

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川崎は2CB+2DHで最終ラインからの前進を図ってきました。田中をCB間に落とす他にも、大島をサイドの底に降ろしたりもしていましたね。広島はシャドーの森島と川辺が対面の選手に寄せたのをきっかけにプレスを開始、サイドに開いた選手はWBが捕まえ、中央に絞ってきたSHやDHは青山、稲垣を前に出して捕まえるという方針でした。ボールをどこで奪うかはまあ曖昧な気がしましたが、1トップ2シャドーのプレスで空いてから時間を奪っておき、前に出てきた中盤の選手が奪ってカウンター!というのがやりたいのだろうと思いました。

そんなに悪いやり方でもないと思ったのですが、田中や大島は時間とスペースがなくてもプレーできる選手なので、なかなかボールを奪うまでは至らないという印象でした。また、中盤の選手が前に出てくるスペースを使われることも度々ありました。14分のシーンなんてまさにそうでした。

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広島の中盤は川崎のビルドアップに対して食いついていくので、その裏のスペースは空いてしまいます。川崎はそこを突いてくるのが非常にうまかったと感じます。このシーンでは一度縦パスを入れていたのでCBの野上も前に釣りだされており、最終ラインではCB2人vsアタッカー3人の数的不利が生まれていました。この数的優位を瞬時に察知して裏に走りだしたアタッカー陣の判断も素晴らしいものだったと思います。ダイレクトにゴールまで迫れる選択肢があるならそれを使う!という姿勢は何のためにビルドアップしているかを忘れていなくて素晴らしいですね。

まあそれも狭いスペースでプレーできるビルドアップ隊の実力あってのことでしょう。特に大島には解説の岩政さんも触れていましたが、普通ならボールを奪えるか下げさせられるだろうというところで縦パスを突きさしてくるため、広島にとっては非常に厄介な存在でしたね。個人的にも好きな選手なので代表復帰期待してます。

20分には川崎が先制しますが、その発端となったのも大島がプレスを外して前進してきたところです。広島が戻り切れないところで引き出したCBの裏を取ってのクロスから最後は田中のミドルシュートでした。

広島のハイプレスはそんなに悪いとは思わなかったんですが、川崎のボール前進はそれを上回ってくるクオリティでした。ボールを持たれるとやっぱ厳しいなあという印象です。

広島のストロングと川崎の対応

さて、ボールを持った広島はストロングサイドである左からの前進を図ります。その中でも特に使おうと意識していたのがマギーニョの裏ですね。

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川崎の右SH、脇坂は広島のCBがボールを持った際に奪おうとして結構前に出てきました。それに伴ってSBのマギーニョも出てくるので、その裏に森島を走らせていました。このあたりのスペースを取ってクロス、というのは広島が今シーズン何度もやってきた形です。ただ川崎もここはしっかり対策していて、特にマイナス方向へのクロスに対してはしっかり中盤の選手を戻して塞いでいました。

さらに言えば、鬼木監督はこのマギーニョの裏のスペースを使われることを相当気にしており、途中から脇坂をあまり前に出さず柏に対してアプローチさせることでSB裏を空けないようにしていました。

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これはFC東京戦で大森がやっていたようなタスクですかね。SBを前に出さなければスペースが空くこともない、という理屈です。ただそう修正しても脇坂マギーニョのコンビは前向きで守備する方が得意なのか結構前に出てくる場面もありました。そういうわけで前半通して左サイドからの前進はそこそこ有効だったと言えると思います。

東京戦でもこうやって続けているうちに穴を空けることができましたし、このままやっていれば得点につながるかなといったところで、前半は終了します。

奇策どまりだったプランB

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そのように思っていたところ、広島はエミルに替えてレアンドロペレイラを投入。青山をアンカーに置いた3-1-4-2に変更します。

これは結構びっくりでしたね。城福監督が後半の頭からこんなに思い切った変更をしてきた試合はちょっと記憶にありません。

この変更の目的は、ひとつはプレッシャーの基準を明確化することでしょう。マークを受け渡しながら奪いに行くと外されて長いボールを蹴られてしまうことが前半で分かったので、2CB+2DHに対して2トップと2IHを当てることでより時間とスペースを削りにいきます。その分最終ラインでは同数ができてしまいますが、まあ負けてるしそのリスクは許容しますということでしょう。

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もう一つの狙いとして、ボールを持った際に前進しやすく、また長身2トップを並べることでフィニッシュの威力を上げることがあったと思います。ボール非保持の川崎は4-4-2になるので、3-1-4-2によるボール前進がうまくはまれば効果は絶大だと思われます。3バック+1アンカーで2トップによるプレスを無効化し、IHのポジショニングでDHの位置を操作しつつ前進することができる配置ですからね。

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3-1-4-2のあるべき姿

ただ、実際は急ごしらえだったのかそこまではうまくいきませんでした。3+1のビルドアップ隊になるはずが青山が最終ラインに降りてさらに稲垣も降りてきたりしていて、位置的な優位を得ることはできていませんでした。まあいつもそんな感じで中盤から人を降ろしてきて安全にWBに届けるビルドアップを行っていましたからね。いきなりポジショニングで相手を操作しろといっても難しいでしょう。

また、前半に機能していた柏と森島のユニットを崩してしまったことにより、今までできていた左サイドからの攻撃も殺すことになってしまいました。ここは森島をIHに、柏を左WBに残したままの方が良かったと思います。この前進ルートが生きていれば2トップへの効果的なクロスももっと入れられたと思いますし、それを囮に前半効いていなかったマイナスへのクロス攻撃ももっとできたかもしれません。

結局この3-1-4-2への変更は同数を作り出してオープンな展開を作り出しただけに過ぎず、攻撃も単調なクロスボールに終始していました。一方で最終ラインが同数になることによるピンチもできており、危ない場面も何度かありました。実際に一度は川崎のミスから追いついたものの、ビルドアップのミスから再び勝ち越され、そのままタイムアップとなりました。

試合を終えて

優勝を目指すならこの試合は勝たなければならず、そのためには後半に2点が必要ということで早めに博打に打って出ましたが、そのためのプランBはまだ未完成。オープンな殴り合いを仕掛けただけで逆転させてくれるほど、昨シーズンの王者は甘くありませんでした。仕込んできた同数プレスをかいくぐられ、培ってきたボール前進を壊してまで奇策に頼って結果が出なかった事実は重いかもしれません。

この結果を受けて、今後どうしていくのかは気になるところですね。今節の3-1-4-2はきちんと立ち位置仕込めれば立派なプランBとして機能することもできるはずですし、残りの3試合をそれに使う、というのもありな気がします。いよいよどこにモチベーションを求めるか難しい状況で迎える首位・鹿島との一戦。どういう方針で、どんなゲームを見せてくれるのかしっかりと見届けたいと思います。

それではまた、次回があれば。

#17 【J1第29節 清水エスパルス×サンフレッチェ広島】

はしがき

平素より大変お世話になっております。前節は神戸に快勝したサンフレッチェ広島、今節は残留に向けて負けられない試合が続く清水エスパルスのホームに乗り込みました。日本平が鬼門と呼ばれていたのも昔の話、ここ数年の対戦成績はそんなに悪くない……ような気がします。多分。そんな試合、スタメンは以下。

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清水の並びは4-2-3-1、広島はいつもの3-4-2-1です。お互いにドウグラスがワントップというスタメン。清水はドウグラスの他にもファンソッコが広島に在籍経験を持っています。広島もベンチに座る清水航平野津田岳人が清水に在籍していたという、古巣対戦の多いメンバー編成でもありますね。

 

清水のスペースの埋め方とサイドチェンジ

さて、この試合は前半から広島がボールを保持してはいましたが、決定機の数では清水の方が多いという展開になっていました。広島がうまく攻められなかったのは、清水のボール非保持におけるスペースの埋め方に原因があると感じました。

 

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高い位置に張ったWBにボールが出れば清水のSBが対応に出てくるので、そうして空いたスペースにシャドーを走らせる、というのが広島がいつもやっている攻撃です。それはこの試合でも見られたんですが、清水の守備陣はきちんと対応してきました。SBが出ていったところに走るシャドーにはDHがついていき、DHが空けた場所はSHが埋め、さらにトップ下や逆サイドのDHがスライドして埋める、という具合です。

特にサイドでSB、SH、DHが回旋するようにスペースを埋める動きは効果的で、広島はなかなかスペースを見つけられていない感じでした。若干アドリブな感じもありましたが、スペースが空いたらそこに人をスライドさせて埋めよう!という意思統一はなされていたように思います。

これに対して広島のボール保持でよく見られたのはサイドチェンジによる前進でした。

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清水の守備陣は片方のサイドにスライドしてスペースを埋めてくるので、どうしても逆サイドには大きなスペースが空きます。そこを青山やハイネルからのサイドチェンジで活用しよう、ということです。オーバーロードアイソレーション、みたいなことを考えていたかは定かではありませんが、密集してスペースを埋めてくる相手に対しては有効なやり方だったと思います。サイドチェンジしてからも結局中央は埋められてるので点はとれませんでしたが、守備陣を揺さぶることはできていたと言えるでしょう。

 

とまあ、チャンスが作れないながらも悪くはないかな~と思っていましたが、30分頃にFKから失点。守備にリソースを割いていた清水はそこまで複雑なボールの動かし方をしていたわけではないのですが、FKを与えたシーンの他にも何度かブロックに侵入されてしまいました。もうすこしボール保持率が下がるとこの問題が表に出てきそうな感じですね。

効いてきたジャブ

 さて、失点した後からの話ですが、広島はCBの佐々木がボールを持って前に出てくる場面が目立つようになります。こうすることで、CBからライン間にいるシャドーに直接パスが入る場面が目立つようになります。ここにパスが入ればWBに渡してからの裏抜けもできますし、同点ゴールシーンのように中央から突破していくことも可能です。

※前半途中に六平に替わって中村が入っていますが、竹内に替わって入ったものと思いこんでいました。そのため図には六平が残っていますが誤りです。申し訳ありません

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同点になったシーンはライン間で受けた森島がドウグラスヴィエイラと共にCBに対して数的優位を作ってパス交換、その間に中に入ってきた柏に渡して突破という流れでした。清水は序盤については前からプレッシャーをかけて攻撃をサイドに誘導し、引いた時にもきちんとMF間は狭くできていたのですが、時間が経つにつれてこのスペースを空けてしまうことも多くなってきていました。こうなると今の広島はうまくコンビネーションで崩せます。

川辺、森島の2シャドーはフィニッシュだけがうまくいかないことも結構あるのですが、このシーンでは川辺がスペースを空けて柏のパスを待っており、それも非常に良かったと思います。

篠田監督の思惑とは

61分頃に、篠田監督が「4-1-4-1に変更しよう」という主旨のことを言っていることが伝えられます。が、試合を見ていた限りではそういった変更がなされていることは感じ取れませんでした。

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押し込まれてしまってボールを前進できない状況だったので、前半の立ち上がりのように前からプレッシャーをかけようとしたのではないかと思われます。押し込まれた状態で使われているスペースを消したいなら4-1-4-1にせずともトップ下を戻して4-5-1のようにすればよいと思うので、そうではなく広島の3バック+2DHに対してプレスはかけやすい並びだと考えて採用したのだと捉えています。

ただ実際にピッチ内にいる選手たちはプレスに行けなかったため、変更する前とさほど変わらずに守っているように見えてしまったのだと思います。この辺は広島に押し込まれた場合にどうするかという点について、ピッチの内外でズレが発生しているのかもしれないと感じました。

清水は75分に中村に替えてジュニオールドゥトラを投入、攻撃に厚みを加えようとします。それを見た城福監督は3分後に稲垣に替えて清水航平を送り出し、川辺をDH、左シャドーにハイネル、右シャドーに森島、右WBが柏と並びを大きく変更します。得点能力のあるハイネルをシャドーに置くことでこちらも得点を狙いに行った形でしょうか。

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するとそのわずか2分後にテコ入れした右サイドから逆転ゴールが生まれます。ハーフスペースを裏抜けした森島に柏からパスが出ると、柏はすぐに中央に入ってリターンを受けてクロス。ドウグラスヴィエイラが合わせて逆転しました。清水としては裏抜けする森島にはDHがなんとかついていきましたが、そのDHが空けたスペースを埋められずに使われての失点となりましたね。もしかすると城福監督はジュニオールドゥトラがこうしたスペースを埋める守備は得意ではないと分かっていて、柏と森島のユニットを右に移したのかもしれませんね。

その後は広島が守備を固め、なんとか失点せずに逃げ切ることに成功しました。

試合を終えて

そんなわけで広島の逆転勝利となったこの試合。ボールを保持して相手を揺さぶり続けることで守備陣を息切れに追い込んでの2得点ということで、素晴らしかったと思います。清水側は苦しい展開であることは分かっていながらも、有効な対策を打てなかったことが響いた形でしょうか。ボールを持たれ続ける展開であっても先に2点目を取れていれば違った展開になったかもしれませんが、何にせよなかなか難しい試合ではあったと思います。

で、この試合の広島を見ていて気になった点が2つあります。それが

①ボール持てない時にどうする?

②ハーフスペース埋められた時にどうする?

の2点です。

①についてですが、今の広島はボール保持していればまあそこそこどのチームからでも点が取れそうな気はしています。なんですけど、ボールを持っていない時の守り方でまずいミスをすることが続いており、たぶんシーズン序盤のようにボールを相手に渡して耐え続ける、みたいなことはできないような気がしています。なのでどうやってボールを奪うかを考えないといけないと思うのですが、これについてはたぶん川崎戦で見られるでしょう。ハイプレスで奪いに行くのか、それとも撤退したら守り切れないという僕の推測は間違いだったと証明して見せるか。どちらもできなければ待っているのは横浜戦の再来でしょうし、どういった策があるのか楽しみに待ちたいです。

②については今節の清水が序盤にやったようにスペースを消されたときにどうやって崩すのか、です。まあ今回のように4-4ブロックでスペースを埋め続けるというのはなかなか続かないと思いますが、5バックにされるとか、名古屋戦みたいにきっちりスペースを消してくるチームに対してやることが明確に決まっているのかどうかも気になります。というかその場合は相手の守備を疲弊させないといけないと思いますが、相手守備のどの部分に負荷をかけていくのか、みたいなことが整理されていてきちんとできるかどうかに注目したいと思います。これは残りのどの試合でも見られる可能性がありますね。今季注力してきたボール保持の部分でさらにレベルアップできるかどうかの重要なポイントだと思います。

天皇杯ルヴァンカップも消えた今、今シーズンの残りは正真正銘あと5試合。タイトルという目に見える結果はなかなか厳しい状態ですが、だからこそ内容にこだわり、今シーズン積み上げてきたものが見える試合となることを期待したいです。

それではまた、次回があれば。

#16 【J1第28節 サンフレッチェ広島×ヴィッセル神戸】

はしがき

平素より大変お世話になっております。前節は結構守備的に生まれ変わった名古屋と勝ち点1を分け合ったサンフレッチェ広島、今節はヴィッセル神戸戦です。前回対戦ではリージョ監督に引導を渡すこととなりましたが、今回は指揮官もフィンク監督になり、公式戦3連勝と良い状態で入ってきた神戸、以前とはまた違ったチームとなっているはずです。そんな試合のスタメンは以下の通り。

 

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広島はワントップにドウグラスヴィエイラが復帰したほかは前節と同じメンバー。対する神戸の並びは3-1-4-2で、スタメンは前節と全く同じだったようです。前回対戦した時の4-2-3-1よりもさらにボールを握り倒す!という意思を感じる配置、およびメンバーチョイスですね。

神戸の弱点を破れる広島の得意技

 さて、試合が始まってすぐの6分に広島は稲垣が先制ゴールを奪います。左サイドに人数を集めてから森島がダンクレーの裏に抜け、折り返しに走りこんだ稲垣が沈める、という形。

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先制点の場面



開始早々にも森島のドリブル突破から川辺が決定機を迎えていましたが、広島が得意とするハーフスペース突破からのマイナスパスという攻撃がいつも以上に刺さっているなという印象でした。

神戸は5バックで守っているので前節とは違いWBが高い位置を取ったところでハーフスペースが空くわけではないのですが、この試合では広島の攻撃陣がダンクレー、フェルマーレンの裏を取るシーンが何度も見られました。対人に強いこの2人はボールを狩るために意識が前に向きがちだからなのか、このスペースは高い頻度で使えており、広島側はここが使えることを明確に意識して準備してきたな、と感じました。

また神戸の3センター、特にイニエスタとサンペールはボールを持った時に特徴を出す選手です。彼らのパスは絶品ですが、一方で自陣まで必死で戻って体を投げ出してシュートブロック、みたいなプレーはそんなに得意ではないと言えるでしょう。少なくとも彼らの持ち味ではないはずです。そうした特性の表れとして、広島がサイドを深くえぐった際、DFとMFの間にスペースができることが多くありました。そこで広島はMFのカバーが間に合っていないこのスペースに川辺や稲垣を走りこませて決定機を演出できていました。

広島がもともと得意とするハーフスペースの突破に、神戸のMF陣が中々自陣深くまで戻ってこられないという事情が合わさり、チャンスを作ることができたという感じでした。

はっきりしていた広島の基準とビジャの列降り

さて、得点が生まれた後は広島が先制したからなのか、もともとそういうプランだったのか、神戸もボール保持の姿勢を強めていきます。前回の対戦では渡やパトリックが神戸のビルドアップに対して右往左往していましたが、今回は守備の基準がはっきりしていました。

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人を捕まえる広島

ドウグラスヴィエイラがアンカーのサンペールへのコースを切りながら大崎(もしくは飯倉)へ寄せていき、ダンクレーやフェルマーレンにボールが出ればシャドーが出ていって縦へのパスコースを封鎖します。

WBは対面のWBを捕まえ、神戸の3センターに対してはドウグラスヴィエイラが出ていったあとのサンペールを稲垣、イニエスタを青山が捕まえます。山口は結構浮いていたのですが、ボールが出たら佐々木が前に出て寄せる形になっていました。

解説の水沼さんはこの点を心配していましたが、まあ2人のDHで3センターを見る形にしてイニエスタやサンペールを自由にしてしまうよりはマシな選択かなと思います。また、山口は裏への抜け出しも行ってくる可能性がありますし、佐々木が対応するというのは割と妥当な気がします。実際前線からのプレスで神戸の最終ラインに時間を与えていなかったので、山口に効果的な縦パスが入ることもあまりありませんでしたし。

元々広島は人への意識が強い守備をしており、それによってポジションが動かされて痛い目を見ることもあるのですが、この試合では前線からのプレスについてはきちんと整備されていて神戸のボール前進を阻害するのに成功していたと思います。もちろん、基準が明確だったこと以外にも個々人がパスコースを遮断する動きを我慢強く継続していたことも要因でしょう。特に3バック+GKに対して継続してプレスをかけ続けた1トップ2シャドーの働きには頭が下がります。

こうして広島が神戸の攻撃を止める中、神戸はビジャの工夫により同点ゴールを奪います。

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降りていくビジャ


 ビジャは中盤まで降りていき、DFラインからボールを受けます。本来ビジャを捕まえるはずの野上も途中まではついていきますが、さすがに中盤まで出ていくとDFラインに大穴を空けてしまってまずいのでどこまでも出ていくわけではなく、MFと並ぶあたりでついていくのをやめます(というかこの時点でDFラインにはそこそこ穴が開いているので誰かに走りこまれるとまずいのですが)。そこで自由を得たビジャから裏に抜ける古橋へパーフェクトなパスが出て同点ゴールが決まりました。

降りていくアタッカーにDFがついていくのは間違っていないと思いますし、それを途中でやめるのも正しいと思います。そこで空いた穴を使われた訳でもない。もちろん古橋の裏抜けに対してケアができたのではないかと思いますが、柏の前から佐々木の裏に抜ける古橋を捕まえるのは難しいでしょうし、後ろ向きで受けたビジャから振り向きざまに完璧なパスが出ることを予測するのも難しいかなと思います。

広島としては良く対応していたとは思いますが、それでも守備に問題を引き起こすだけの効果がこの列を降りる動きにはあるということでしょう。

やはり両チームともボールを持てば鋭い攻撃を繰り出せるため、どちらがボールを保持して攻め続けられるか、というところが試合のポイントになっていきます。

広島のボール保持に見られた成長

そんな中、広島のボール保持において明確に成長したと思える点がありました。それが右サイドからのボール前進です。

神戸の5-3ブロックに対し、広島のCBは比較的余裕を持ってサイドから持ちあがることができます。これまでの広島は左サイドからは効果的に前進できていましたが、その背景にはドリブルで持ち上がり、ハーフスペースにもパスを供給できる佐々木の存在がありました。一方、右サイドの野上はボールを運んで前進することなくパスを出してしまい、相手の守備陣に穴をあけられないことが度々ありました。

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運べる野上

しかし、この試合では39分の勝ち越しゴールをはじめ、34分にも野上が深い位置まで持ち上がって斜めのパスを打ち込むシーンが見られました。右サイドはイニエスタが守備をしているため山口がいる左よりも持ち上がりやすかったこともあるかと思いますが、左サイドでうまくいっていることを右サイドでも適用できるようになってきた感があり、大変素晴らしいと思います。

勝ち越しゴールの後もPKのチャンスがありましたがドウグラスヴィエイラのキックは失敗、2-1のまま前半が終了しました。この試合、広島の攻勢を支えた要因の一つに広島のネガティブトランジションの鋭さがあると感じましたが、このPKのシーンもそうでしたね。

 ボール保持権の奪い合い

さて、後半について一応題名はつけましたが、正直あまり話すことがないんですよね……両チームともにボールを保持できなければ殴られ続けるというチームの特性上、ボール非保持時の振る舞いを修正するのではなくよりボールを握る時間をより増やして攻め続けようとしているように見えました。神戸の修正としては前半に広島の対人守備から浮く形になっていた山口をDFラインの裏に走らせる動きは見られましたがまあそのくらいで、基本的には前半と似たような主導権争いが繰り広げられていたように見えました。

その中で65分に森島のパスから抜け出したドウグラスヴィエイラを大崎が倒してレッドカード。そこで得たFKを森島が決めて3-1となったことで、試合の大勢は決したかなと感じました。とはいっても人につく守備の悪いところが出て守備組織に穴が空き、失点はしたのですが。

ここが広島の改善点ですかね。前節も自陣に撤退した際に中盤でDHが動かされ、そこに空いた穴を使われて失点していました。前方からプレスをかける場合はきっちり人を捕まえ、自陣に撤退した時にはきちんとスペースを埋める対応をするという風に、意識を切り替えることが必要になってくるのでしょう。相当難しい課題だとは思いますが……

試合を終えて

試合そのものについては、広島が終盤にカウンターから3点取って試合を終わらせました。神戸は一人少ない上に攻撃に人数をかけているのでまあこうなることもあるでしょう。個人的には6点取ったことよりも神戸の弱点を理解してそこを叩き続け、ボール保持攻撃の威力で上回れたことが大きかったと思います。

右サイドからのボール前進にも成長が見られたこの試合は、広島にとってターニングポイントといえる試合かもしれません。この試合に匹敵するパフォーマンスを見せることができれば、ACL出場権を得ることも不可能ではないかもしれません。残り6試合のないようにも期待したいと思います。

それではまた、次回があれば。